去る2026.3.7、CYCLE MODE RIDE OSAKA 2026(以下サイクルモード)に行ってきました。特に理由はなかったのですが、実はサイクルモードに行くのは初めて。
最初は1記事にまとめるつもりだったのですが、シマノブースでの話が中々に濃密だったので、2つに分けたいと思います。
シマノブースにて
Qは私、Aはシマノブースの担当者様の発言です。可能な限り現地でメモしましたが、若干のニュアンス違い等はあると思います、ご了承ください。
Q:先日発売がアナウンスされた、ティアグラについていくつか質問をさせてください。105以上をレーシンググレード、CUESを実用車およびグラベル・Eバイクグレードとカテゴライズした時、今回のティアグラはスポーツ(非レースで舗装路をスポーツ走行する)層をターゲットにしているのかな?という印象を受けました。
会社として、新型ティアグラはどのようなユーザーを想定して発売したのでしょうか?
A:まさに持たれている印象の通りで、いまからロードバイクを始めたいという人を想定しています。日本国内でいうと「いま、通勤通学にクロスバイクを使っています。今後、週末のサイクリングでは新しくロードバイクを買って乗ってみたいなぁ」というような人がターゲットのイメージです。
(筆者のような)いまロードバイクに乗っている方にお選び頂くということは、(それは勿論ありがたい事ではありますが)あまり想定していません。
Q:今回新発売するティアグラを、敢えて?11sとした理由を教えてください。製造業経験者として、「ロード用は全グレード12s」とした方が、様々なコスト削減に繋がるのでは?と思うのですが。
105までが上位グレードと互換があり、ティアグラはそこと差があるという事は承知しています。
それを踏まえても、個人的には敢えて11sで発売する理由が、105機械式変速とのカニバリを防ぐくらいしか意義を見出せませんでした。過去の11sと互換するのであれば、それら製品の消耗品供給としての役割を兼ねるという意味もあったはずですが、それもありません。
A:会社として、105以上のグレードとティアグラは明確に区分しています。端的に回答するのであれば、11sにしたのはそれが決定的な理由です。全て12sの方がSKU上有利ではないかというご指摘は、その通りです。
過去製品含めた互換に関しては、会社として変速性能を非常に重要視しています。単に動くだけでは良しとしていません。
例えばスプロケットに関していうと、電動変速用と機械式変速用で作り分けていています。モーターのRDとワイヤー引きのRDでは働く力が違うので、であれば刃先の形状も変える必要があるという判断からです。一般ユーザーの方が、違いを体感できるかは分かりませんが(笑)。
文字を例に説明すると、文字を「情報伝達の手段」とみなした場合、読めればオッケーと評価する事もできます。手帳のメモであればそれでも良いのですが、会社案内や製品のパッケージに書く文字がそれではダメだというのは、ご納得頂けるかと思います。文字単体だけでなく、単語や文章で見た時の全体のバランスからくる美しさも、とても重要です。幾ら文字単体が上手でも、大きさや向きのバランスも大事です。
弊社は、変速性能に於いて、文字で言う所の美しさにまで強く拘り、ヨシとする基準が非常に厳しいと認識しています。
11sとした理由ですが、大前提としては最初にご説明しました通り、社内で105以上とティアグラの立ち位置が明確に異なるからです。その上で、お客様(このお客様は個人ユーザーも含むが、どちらかと言えば完成車メーカーの意)から105より下の価格帯の要望が強いという理由も大きいです。
コンポーネントの全体的な価格が上がる中で、冒頭にお話ししたようなクロスバイクと105のロードバイクには、大きな金額の開きがあります。クロスバイクと105ロードバイクの間にも、日本だけでなく世界レベルで非常に大きな需要があります。その需要を埋める必要があるという判断で、今回のティアグラ発売に至りました。
Q:確かに、変速性能に関しては素晴らしいと思いました。
私ごとになりますが、私は2009年頃からロードバイクに乗り始め、最初のコンポはスラムでした。その頃からチェーンやカセットはシマノ製品を使っていたのですが、シフターやディレイラー含めて全てシマノで統一されたバイクは、2022年になってから初めて乗りました。アルテグラのDi2を使っていますが、ワイヤー引きと遜色ないくらいの速度で前後ディレーラーが動き、チェーン落ちも全くありません。
セカンドグレードですが、変速性能に全く不満はありません。デュラエースのバイクに試乗したこともありますが、負け惜しみとかではなくアルテグラとの違いは殆ど体感出来ませんでした。
過去の値段を知っているので正直にいうともう少し安ければという思いはありますが、それでも文句なしに素晴らしいです。買って良かったと思っています。
A:ありがとうございます。変速性能は、先ほども申した通り、弊社が拘っている部分です。同価格帯の他社製品と比較した場合、弊社製品の方が優れているという自負もあります。
価格について、これはユーザーさんのお叱りを受けてしまうかもしれませんが、実はもう少し高くても良いのでは?とも思います。(これが会社の見解なのか、説明してくれた方の個人的意見なのかは不明。私は、話し方のニュアンスや全体の流れから会社の意見と受け取った)。
これだけの性能をこの値段で提供している会社は、現状他にありませんので。他社と比較した時、当社の製品は価格が低いにも関わらず性能が良いという立ち位置にあると思います。
Q:これまでの質問内容に付随するかもしれませんが、日本ではティアグラではなくできれば105を選んだ方がいいという風潮がある気がします。これは日本独自の考え方なのでしょうか?海外のユーザーは、どのようにコンポーネントのグレードを選択しているのでしょうか?(日本のユーザーより、海外市場に合わせた商品展開という事なのでしょうか?)
A:ご指摘の通り、日本において「105以上」という風潮がある事は弊社でも承知しています。海外市場では、日本ほどはそれがありません。ティアグラ搭載バイクで満足出来なくなったお客様は、データ上バイクを丸ごと乗り換える傾向にあります(このデータが国内なのか海外なのかは不明)。ティアグラが搭載されるバイクは比較的安価なフレームやホイールが多いのも、その理由なのかもしれません。
105以上という風潮について良し悪しは名言出来ませんが、自転車の及び各種部品の価格が全体的に上がる中で、105についてもいつまで現状の価格を維持できるかは分かりません。したがって、それだけではないという選択肢は会社としても提示していきたいと考えています(ここちょっと曖昧)。
例えば、ここにあるバイクは、自動変速コンポーネントを搭載したバイクです。通勤用に2週間ほど借りて乗りましたが、結構いい感じでした。なお、自動変速を謳っていますが、手動でも変速は可能です。
Q:(スプロケットロー側の段数差を見ながら)これだけの歯数差があって自動変速となると、意図しないタイミングで変速された時にくるショックが気になりますが、自動変速そのものは絶対的に正しい道だと思います。私もクルマを単なる日常の足としている人よりは好きだと思いますが、一方で今更MT車に乗りたいかと聞かれると、それは面倒臭いかなと感じるので。
A:自動変速は、スポーツ自転車にも勿論ですが、どちらかというとまずは実用車(ママチャリ含む)に使えたらなと考えています。スポーツバイクユーザーの方からすれば信じられないかもしれませんが、実用車を利用する多くの人は、変速ってなに?という人がほとんどなのです。
自動変速搭載自転車を、スポーツ自転車に乗らない一般の方にテスターになってもらったところ、多くの方から「これは電動アシストが効いてるの?」という声をいただきました。確かに「電動」なのですが、アシスト効果はありませんと説明すると、みなさま大変に驚かれました。それくらい、変速には潜在需要があるという事が、よく分かった出来事でした。
Q:自動変速は大きなゲームチェンジになりそうですね。これは機会があれば乗ってみたいです。様々なお話が聞けて良かったです、ありがとうございました。
A:こちらこそ、ありがとうございました。

自動変速のバイクです
個人的感想
ここからは、シマノ担当者の方から伺ったお話の、個人的な感想です。ここまで読まれた方は、それぞれ色んな意見があろうとは思います。私もそうです。幾つかの論点を順不同に考察していきます。
ティアグラ搭載バイクで満足出来なくなったお客様は、データ上バイクを丸ごと乗り換える傾向にあります
コレに関しては、そりゃそうだろって話ですね。
ティアグラのコンポーネントを105以上にアップグレードするには全部組み換えが必要です。当日そこまで頭が回らなかった自分にイライラしますが、そこは105バイクで満足できなくなった人のデータも提示してくれないと、ユーザーの消費傾向を把握する事は出来ません。(勿論、105バイクで満足できなくなったユーザーは丸ごと乗り換える傾向にあるというデータが、社内的にあるのかもしれませんが。そこは今回聞けていません)。
ただ一旦冷静に、「ティアグラ完成車を乗り換えたい」と思った時にフレームだけ乗り換えようする場合。乗り換え先のフレームが電動専用であれば、もれなく丸ごと乗り換えが必要です。近年は105まで電動対応したことで、ハイエンドフレーム×105コンポという組み合わせの完成車も出てきました。それが選択肢になるでしょう。
近年は、「電動専用ではない=機械式コンポも使用可能=ハイエンドフレームでない」という図式が成り立つ事が多いと思います。その場合、そもそもフレーム売りをしているメーカーが少ないです。であれば、「ティアグラ完成車バイクを乗り換え=全交換」という図式もある程度納得感があります。
「少しずつパーツをアップグレードしていく楽しみ方が出来なくなる」という論については、後ほど(文字数の都合上別記事にするかもしれません)。
ユーザーが体感できないほどの変則性能に合理性はあるのか?
個人的には、ここを1番指摘したいです。
メーカーとして、性能を追求して結果付加価値を提供するという姿勢自体は、おかしなことではありません。
一方で、ユーザーが体感できるか分からないほどの性能水準は、どこまで必要なのかな?とも思います。デュラエースだけはそれを追求して、アルテグラ〜ティアグラはシームレスに行き来出来るような体系にしても良いのでは?と感じました。(それをすると、デュラエースを売るためのーと言われるかもしれませんが)
日本の幾つかの大手家電メーカーの失敗が、正に過剰なスペック追求でした。今後「ちょうど良いスペックをちょうど良い価格で」提供するメーカー(恐らくは中国ブランド)が市場に入ってくると、まずは低価格レンジから崩されていく未来もあるかもしれません。競争を起こすという意味では、そこは新興メーカーに期待したいところです。
また値上げするの?
これに関しては「またかよ」という思いと「そりゃそうだよな」という思いが半々?7:3?くらいです。
パーツの製品が毎年上がり、どんどん買いにくくなっている現状があります。これに関しては、シンプルにキツいです。それ以上でもそれ以下でもありません。次のバイクを買うのがいつになるのかは分かりませんが、105にダウングレードしないと予算が追いつかない気がします。乗り換えの理由次第では、今手持ちのアルテグラDi2を載せ替えるかもしれませんが。
一方で競合他社との立ち位置を比較したとき、少なくともロードコンポーネントにおいては、シマノ製品は「他社より性能が高く、安い」です。ここだけをみれば、多くの方が異論は無いかと。
他社より性能が高い製品を作れている以上、価格を出来れば他社並みにしたいというのは、企業として当然の判断だと思います。自分の会社が、他社より優れている製品を作っているにも関わらず、安く販売していることを想像してみて下さい。私なら、もう少し値上げしてその分給料に反映してよってなると思います。
まとめ
自分が抱いた疑問を自分の言葉でぶつけ、それに回答を頂けるというのは、非常にありがたい機会でした。
この他にも色々考えさせられる出来事・話がありましたので、それはvol.2にて。