ヒルクライムレースを頑張りたい勢の私にとって、チューブレスタイヤの走行性能は気になる事項の一つです。
「チューブレスの方が、チューブが無い分CLと比較して走行抵抗が低い。加えて、低圧で運用できる事で路面追従性が良くなり、それも速さにつながる」
というのが一般的な認識だと思います。
ただ、個人的にはチューブレスの「美味しい空気圧」を把握出来ていません。「CLより低圧運用できる」という事は承知していますが、どうも走行感がモッタリするような感じがして、TLでも5気圧程度入れていました。
今回は、この低圧運用がヒルクライムのタイムに与える影響を、実際に走って確かめてみようという目論見です。
いつもの如く、結論だけを知りたい方のために先に結論を書きます。
5Bar | 4Bar | |
Lap1 | 16:23 / 265w | 16:16 / 265w |
Lap2 | 16:13 / 265w | 16:17 / 265w |
平均勾配6.0%、登坂距離5.1kmのヒルクライムに於いては、2本平均では殆どタイム差はありませんでした。
実験のきっかけ・目的
チューブレスタイヤを使う目的の一つに「低圧運用」があると思います。
私が自転車に乗り始めた2008年頃、ロードバイクのタイヤは、私のような体重60kg程度のライダーでは7気圧程度入れるのが「普通」とされてきました。
空気圧が低いと走行抵抗が増え、「小石を踏んだ時パンクしちゃうよ」と言うのが常識だった時代です。その「当時の常識」が正しかったのか否かは、過去に「高圧 vs 低圧」で実験しています。
ところが2023年現在、様々なデータ解析や技術の進歩により、体重60kgのサイクリストであれば5気圧程度にする事がスタンダードになっています。
チューブレスは、パンクし難いという特徴も相まって、更に低圧で運用する事が出来ます。
空気圧を下げる事で
- 走行抵抗が減る(=速く走る事が出来る) ※
- グリップ力の向上(=コーナーで安定する)
- 乗り心地が良くなる(=疲労が蓄積しにくい)
と言ったメリットがあります。
※一般に、体育館のような滑らかな路面であれば、空気圧は高い方が走行抵抗が低くなります。しかし、私たちがロードバイクで走るのは、アスファルトやコンクリートで舗装された路面が中心です。これらは、表面に細かな凹凸・経年劣化に伴うひび割れがあります。
空気圧が高いと、それら微小なデコボコてタイヤが跳ねてしまい、逆に遅くなる事が近年の研究で分かってきました。
私がメインで参加する1時間程度のヒルクライムレースであれば、
「走行抵抗が下がる事で、速く走る事ができる」
この恩恵を受ける為に、チューブレスタイヤを使う方が多いのではないでしょうか?
ただ、一言で「空気圧を下げる」と言っても、そのサジ加減が難しい。4気圧程度まで下げても良しとするタイヤメーカーもあります。
これくらい落とすと乗り心地は良くなる実感がありますが、一方で過去の常識が未だに抜けないのか、走行感がマイルドになり過ぎてタイム的には遅いのでは?と疑心暗鬼になります。
これを「調べてみました」というのが、今回の目的です。
結果は、冒頭に記載した通りです。
チューブレスタイヤのメリットデメリットは、FFWDのサイトでかなり詳しく書かれていましたので、ご興味ある方はこちらもどうぞ。特別に目新しい記載がある訳ではありませんが、かなりユーザー目線寄りの視点からメリットデメリットが分析されております。
実験機材
- フレーム:Bianchi Specialissima Disc
- メインコンポ:Shimano Ultegra12s
- ホイール:Mavic CosmicSLR45 Disc
- タイヤ:Continental GP5000 TLR 25c
実験コース
蓬莱峡ヒルクライム(距離5.1km、平均勾配6.0%)で実施しました。Strava上では、もう数100m長いセグメントになっています。
しかし、本実験では「信号ガチャ」によるタイム差を排除するため、約300m手前にある信号をゴール地点としています。
実験に際しての、その他条件
- Lap平均パワーが265w・約4.4w/kgになるよう、2本ずつ登坂する。
- 空気抵抗をなるべく揃える為、全行程をブラケットポジションのシッティングで登坂する
- 筆者がコントロール出来ない「各回の風向き・気温上昇に伴う気圧変化etc」は、考慮しない。
- パワーソースは、Assioma Duoを使う。走行前に、スマホアプリでゼロ校正をした。
- 各Lapのスタート前に、同一量の水をボトルに入れて各回の車体重量を揃える。→タイムにほとんど影響しないことが分かったため、除外する。走行順の都合上、4Barで走る回の方が100g程度ボトルは軽くなったと思われる。
- タイヤの空気圧は、5気圧と4気圧に調整した。
実験結果
5Bar | 4Bar | |
Lap1 | 16:23 / 265w | 16:16 / 265w |
Lap2 | 16:13 / 265w | 16:17 / 265w |
平均勾配6.0%、登坂距離5.1kmのヒルクライムに於いては、2本平均では殆どタイム差はありませんでした。
考察・感想
低圧にするとヒルクライム中のゴツゴツ感が減り、やはり一瞬「遅い?」という感覚はありました。なお、その感覚が誤っているのは、タイム差が証明しています。
若干話がそれますが、スペシャリッシマと軽量リムブレーキのエモンダでは、スペシャリッシマの方が総じて振動吸収性がよく・乗り心地も良く感じます。ただ、それが災いして?エモンダより遅く感じます。
今回でいえば、スペシャリッシマが4気圧で、エモンダが5気圧です。
この「速く走っている」という感覚と実際の速さのギャップが、何によって生まれるのかが気になりました。
私の経験が乏しいのか、何かしらの感覚が悪いのかは分かりませんが。訓練すれば伸びるのでしょうか?(仮にそれが向上して何の役に立つのかも分かりませんが)
話を低圧に戻します。
ダウンヒルに於いては、低圧側のメリットをはっきりと体感する事が出来ました。特にコーナーリング中、タイヤが跳ねて外側に膨らむ感覚が減ります。ダウンヒルはタイムを取っていませんが、コーナーの通過速度を少しでも上げる事ができれば、ロードレースにおいては非常に有利に働くと思います。
まとめ
今まで、CL同様TLタイヤも5気圧で乗っていましたが、4気圧でも十分という事が分かりました。
タイムはほぼイコール。そして、4気圧と5気圧では、乗り心地の差を実感する事ができました。コレであれば、今後わざわざ5気圧入れるメリットがありません。
次回は、この空気圧データも踏まえて「CL vs TLR」の実験をする予定です。皆さんはおそらくこっちの方が興味があると思いますので、今回はその「本番」にむけての準備を兼ねて実験してみました。