以前から記載している通り、Emondaが壊れました。
原因は、トレックの台座一体成形車体に「必ず取り付けなければならない部品」の存在を知らず、それを取り付けずに車体を組み立てた結果によるものです。
また、この件について現時点では
- メーカーからは「専用部品を取り付けていなかった事」
- ショップからは「etapを取り付けたのは当店の作業ではないこと」
との理由で、保証できないと言う見解が出ています。彼らの、上記言い分には納得しています。
これらの出来事から「今後は、自転車の組み立てやメンテナンス(以下メンテ)は、全てショップに任せるべき」という示唆を得ることが出来ます。
ただ、この示唆は100%その通りなのでしょうか?
と言うのも、私の場合、関西に引っ越ししてから10年近く、多くの作業を自分でやってきました。
当時は「自店購入車体以外の整備はお断り」というショップが一定数存在し、転勤してきた私は自分で作業せざるを得なかったという事情があります。(最近は逆に、「他店品・他社品歓迎」を謳う店も出てきていますね。)
他には「他店購入車体も面倒は見るけど、キャノンデールは取り扱ってないんです」っていうパターンもありました。
(実業団で当時お世話になった某ショップは、こっち側でした)
これだと、ヘッドベアリングやリアメカハンガーetcのメーカー専用部品を他店で購入し、取り付けはそのショップにお願いすることになります。これでもやってくれる店はあると思いますが、頼みにくいのは間違いありません。
このような背景もあり、基本的な作業は全て自分で行っていました。引越しの都度、「お付き合い」の為に自転車増やせませんし。
ただ、今回の件を機に「自転車の組み立てや定期メンテナンスについて、作業はプロに任せるべきか、自分で作業をすべきか」について、改めて考えてみることにしました。
なお、結論から言えば「全て工賃を払ってプロに頼む」or「自分で実施」は、どちらでも良いかと。一長一短あり、個人的には明確な結論が出せませんでした。
現実的には、多くの人が「100%ショップ」でも「100%自分で作業」でも無く、内容によって使い分けていると思います。
ただ「プロに任せる場合でも、メンテのスキルは身につけた方が良い」と言うのが、現時点での個人的な考えです。
そして、スキルを身につけようとすれば、工具を揃えて自分の手を動かす必要がありますので、結果として頻繁に発生する作業ほど自分で済ませる事が増えると思います。
両方のメリットデメリットを比較
自分で作業をするメリット
- 自転車整備に関する知識・スキルが身につく
- 日頃から自分の自転車に注意が向く事で、ちょっとした変化や違和感に対して敏感になる
- マメに点検する事で、大きな故障を未然に防ぐことが出来る
- ショップと自分の都合に関係なく、好きな時にメンテが出来る
- 通販で部品を安く調達できる
- 工賃がかからない
- 自分の自転車に対する責任が発生する
自分で作業をするデメリット
- 自転車としての安全性を確保出来ない可能性がある
- チェーン洗浄etcの軽作業も、突き詰めていけば相当に時間がかかる。
- 年何回使うか?という専用工具まで揃えると、費用対効果は疑問。
- メーカー・ショップの保証対象外となる。
プロショップに作業を任せるメリット
- 一般ユーザーと比較して、専門的な知識や知見が豊富・場数をこなしている
- 一般ユーザーが揃えにくい、専門的な工具や設備・作業環境が整っている
- 一般ユーザーと比較したとき、作業品質が高い水準で安定している
- 作業に費やす時間を、他のことに使うことが出来る
- 何かトラブルがあったとき、メーカーやショップの保証が効く(はず)
プロショップに作業を任せるデメリット
- 都度、自転車を持ってショップに行かなければならない。入院であれば2回。
- 預かりになると、その期間自転車に乗る事が出来ない
- 知識やスキルが身につかない(作業や動画を見ているだけでは、スキルは身につかない)
- 出先や、急を要するトラブルが発生したとき、自分で対処できない
- 自転車の管理が疎かになりがち?
- 部品を全て、ショップで購入する必要がある (通販より割高かつ、取り寄せの場合納期も長い傾向)
- 工賃が発生する ※
- トラブルがあったとき、責任の所在が曖昧になる
- 保証関係で揉めた時、スキルが無いと対等に議論する土俵に立てない(泣き寝入りのリスクがある)
ざっと思いつくがままに列挙してみましたが、他にもあるかもしれません。
※「工賃がかかる」をデメリットに入れるのは何事か、とお叱りを受けるかもしれませんが、例えばCLタイヤの交換であれば、高額な初期投資や工具は必要ありません。チューブ交換やパンク修理が出来る人であれば出来る作業です。
ここでは、このような軽作業まで「わざわざショップにホイールを持って行って、スタッフの手が空くのを待って(若しくはホイールを預けて)、お金を払ってやって貰う作業か?」というニュアンスだとご理解ください。
逆にBBの圧入etc、専用道具が必要な作業であれば「たった数千円の工賃でやって貰える」のはメリットになると言えます。
プロに任せる=専門的スキルと設備・時間にお金を払う
ここまでをまとめると、プロに任せる意味は大きく2つありそうです。
一つは、「自分に出来ないから、やって貰う」
もう一つは、「時間を別のことに使いたいから、(代わりに)やって貰う」
前者は、レストランで食事をするような感覚でしょうか。
私とプロの料理人が同じ「ボロネーゼ」を作った時、先のタイヤ交換とは違い、食材の選定や調理の技術、調理器具の違いによって品質に大きな差が発生します。
後者は、テイクアウトを○○イーツに頼むイメージでしょうか。
スキルというよりは、時間を買うと言えば分かり易いと思います。
なお、個人的には
道具やスキルが無いのでショップにお願いする作業
- ホイール振れ取り
- BBの圧入
- フロントフォークのコラムカット
自分で出来なくは無いが、工数を考えたときショップにお願いしたい作業
- フレーム内通しのブレーキ・シフトワイヤー交換
- 新車の場合、アウターワイヤー取り付け(ポジションに合わせた長さの微調整と、カット後の断端処理が面倒なので…)
自分で行う作業
- 上記以外の調整・消耗品交換
もし自分に整備の技術や道具が無い場合、プロに頼る以外の選択肢がありません。
しかし、スキルや道具を身につけていく事で、整備を任せるか自分でやるかの選択肢が生まれます。
実際のところ
「わざわざショップに持ち込むのが手間なので、消耗品交換etcの軽作業は自分で実施。ヘビーな作業や高度なスキルが必要なものは、ショップにお願い」と使い分けている人が大多数ではないでしょうか?
ただ、使い分ける事によるデメリットもあります。
ショップ以外の作業が原因で発生したトラブルは、保証対象外
「純正品以外の部品を取り付けた場合は、保証対象外」
「自店実施以外の作業で発生したトラブルは、保証対象外」
メーカーやショップ目線で見たとき、これらの約定は極当たり前の内容です。
「ボルト思い切り締めたら、カーボンクランプが割れました」
「RDを交換したら、ホイールに巻き込んでフレーム割れました」のようなトラブルを、メーカーやショップが保証出来るはずがありません。
彼らからすれば、
「取説を読んで、正しい作業をしてください」
「純正品・メーカー指定品を、専門店で取り付け作業しないからです」
としか言いようが無い話です。
冒頭の記載に話を戻すと、
Sram機械式で納車された車体を、同社電動式に組み替えたのは私です。
トレクレンチにてトルク管理は行っていましたし、Sramのマニュアル通り確実に組み付けました。
ただ、TREKのパーツリストを見落とし、専用部品の存在を知らず、組み付けをしなかったのも、私です。
以上より、エモンダが壊れた責任は私にあります。
そして、自分の自転車に対する責任・勉強の意味で、メーカーに色々と問い合わせをしました。
メーカーから、一つ一つに対して丁寧に回答を頂いたのは、前回迄に記載した通りです。
なお、結果的に様々な事象が芋づる式に判明し、今度はショップ側とモめている訳ですが…コレは、またの機会に。
ただ、責任やスキルを持っていなければ、そもそも何が明らかになったところでモめる事が出来ませんので、これはこれで良かったのかなぁと思います。
まとめ 保証を取るか、手間とコストを取るか
車体毎の専用部品や規格、ワイヤーの内装化・油圧ブレーキなど、年々ユーザー側で手を出せる範囲が狭くなっているように感じます。
それはイコール、ショップにお願いする作業が増える事になります。
また、「自店実施以外で作業した結果発生したトラブルは、保証できませんよ」と言われると、安易に手を出しにくく感じます。
では、今まで自分で行っていた(人も多いであろう)タイヤやチェーン、スプロケやブレーキシュー・パッドetc消耗品の交換までショップに頼むべきなのか?というと、それもまた疑問です。
これだけ色々書いて身も蓋もない結論になりますが、「ショップの保証内容が、持ち込みの手間とコストに見合うかどうか」を、ユーザー側で吟味して判断するしか無いと思います。
個人的には、今回このような形で自転車を壊しましたが、メンテへのスタンスは変わらないと思います。
メンテの都度全てショップに持ち込むと言うのは、正直その工数の方が負担です。
今回の教訓としては「どのような専用部品が使われているかを、納車時に確認する」
もっと言うなら、「専用部品が多数使用されている車体は、購入しない」と言うことになるでしょうか。それら専用部品がいつまで手に入るかも、メーカーの匙加減ひとつですし。
プロの自転車は、1秒を速く走る為の仕様設計が大切ですが、アマチュアのそれは、整備性や部品の入手性も同じくらい大切だと思います。