ヒルクライム 実験

ヒルクライムにおけるエアロの重要性を調べる ダンシング編


ヒルクライムレースを頑張りたい勢の私にとって、空力性能の向上によるタイム短縮は気になる項目の一つです。

昨今、自転車界隈は風洞実験や空力に関する分析がすすみ、「平坦巡航だけでなくヒルクライムに於いても重量(軽量)より空力性能が大事だ」という事が分かってきました。

実際、新しく発売される自転車は、フロントフォークやヘッドチューブが板のように薄く、ハンドルもエアロ性能に重きを置いた製品が中心です。私は、TREKのエモンダ・Bianchiのスペシャリッシマといった軽量のオールラウンドバイクを好むのですが、プロのレースでは前者のエアロフレームを使われる事がメジャーになってきています。

ただ一方、自転車を走らせるのは上に乗る人間です。幾ら自転車単体がエアロになっても、自転車の上にいる人間がエアロで無ければ、せっかくのエアロフレームの性能を無駄にしてしまいます。とある分析によると、自転車と上に乗る人間の空気抵抗は、2:8程度になるという結果もあるとか。

それだけ、上に乗る人間の空気抵抗が大きいのです。

ここで、ふと疑問に思います。

「ヒルクライム中、勾配の変化やペースアップetcの場面でシッティングとダンシングを使い分けるけど、よく考えたらダンシングって空気抵抗デカそうじゃね?もしエアロが大事出なら、シッティングで登った方が速いのでは?」

という事で、実験してみました。

題して「ヒルクライムに於いて、シッティングとダンシングではどれくらいタイム差が生まれるのか」

結果は、以下の通りです。

  シッティング ダンシング
Lap1 16:42 / 265w 16:56 / 265w
Lap2 16:31 / 265w 17:03 / 265w

平均速度約18km/hのヒルクライムでは、シッティングの方が、1本あたり23秒速く登ることが出来ました。

これを乗鞍換算すると、およそ92秒程度差が生まれる可能性があります。

実験のきっかけ

ヒルクライム中にダンシングをする事で、シッティングの時にはサドルに掛かっていた体重もペダルに乗せる事ができます。結果として、シッティングの時より大きなパワーを簡単に出せるようになります。

また、シッティングの時とは異なる筋肉を使う事で、筋肉の疲労を分散させる事も可能です。もし1時間のヒルクライムをするとして、シッティングの筋肉とダンシングの筋肉をそれぞれ100%使えば、理論上は持てる力を余す事なく走り切る事ができる筈です(これは簡単ではありませんが)。

他方、ダンシングをすると前面投影面積が増えます。空気抵抗の大きさは、前面投影面積だけでなくモノの形状によってもかわります。ただ、人間の形は変える事ができません。ここでは話を単純化するため「前面投影面積が大きくなる事で、空気抵抗も大きくなってしまう」とします。

まとめると「ダンシングをする事で、大きなパワーを出しやすくなる。一方で、空気抵抗は増える。では、もしシッティングと同じパワーでヒルクライムをしたら、ダンシングによる空気抵抗の増加はどれくらいのタイム悪化を招くの?」

コレを調べたくなったというのが、実験の理由・キッカケです。

各種実験条件

比較対象

  • A群:コースの全工程をシッティングでヒルクライム。パワーはAve265w (4.5w/kg)
  • B群:コースの全工程95%程度※をダンシング。パワーはAと同様。 ※約1,000秒(16分40秒)の途中、2回各30秒シッティングを挟んだ。

使用機材

  • フレーム:Bianchi Specialissima Disc
  • ホイール:Mavic Cosmic SLR45
  • タイヤ:Continental GP5000S TR
  • メインコンポ:Shimano Ultegra 12s

実験コース

蓬莱峡で実施しました。なお、Stravaのセグメントとしては山頂の交差付近がゴールです。ただし、今回は約300m手前にある信号をゴール地点として、その数m手前にあるマンホールを基準地点としてタイム計測しています。

実験に際しての、その他条件

  • Lap平均パワーが265w・約4.5w/kg(体重が減ったのでw/kgがあがりました)になるよう、2本ずつ登坂する。
  • 前述した通り、A群は全工程をシッティング。B郡はダンシングで登坂する。
  • 筆者がコントロール出来ない「各回の風向き・気温上昇に伴う気圧変化etc」は、考慮しない。
  • パワーソースは、Assioma Duoを使う。走行前に、スマホアプリでゼロ校正をした。
  • 各Lapのスタート前に、同一量の水をボトルに入れて各回の車体重量を揃える。→タイムにほとんど影響しないことが分かったため、除外する。
  • タイヤの空気圧は、4気圧に調整した。
  • 走行順は、筋肉の疲労や風向きの変化を最小限に抑えるため「シッティング1→ダンシング1→シッティング2→ダンシング2」とした。

実験結果

  シッティング ダンシング
Lap1 16:42 / 265w 16:56 / 265w
Lap2 16:31 / 265w 17:03 / 265w

平均勾配6.0%、登坂距離5.1kmのヒルクライムに於いては、2本平均で23秒の差となりました。

考察・感想

実験当日の風が5m程度と強かった事も影響した可能性はありますが、思った以上にタイム差が生まれました。

ツールド沖縄やニセコクラシックのような長距離・競技時間の長いロードレースであれば「平坦区間はシッティング・上りは筋肉を使い分けるためにダンシング」という作戦はアリだと思います。

ただ、競技時間が比較的短いヒルクライムレースでは、なるべくシッティングで登坂した方が良いタイムを出せるかもしれません。私は、もともとダンシングを多用するタイプではありませんが、この結果をみるとなるべくシッティングでパワーを出すことに注力すべきだと感じました。

実際のレースでは、シッティングとダンシングで同じパワーというのは考え難いので、次回は「ダンシングで速く走るためには、どれくらい多くパワーを出す必要があるのか?」をやってみたいと思います。(16:30で走る時、シッティング265w・ダンシング280wが必要であれば、ダンシングをするなら15w以上出し続ける必要があると言えると思います)

まとめ

当初は「CLタイヤ vs TLRタイヤ」の実験を予定していましたが、筆者の不手際により急遽予定変更となりました。

ただ、当日風が強かった事もあり、空気抵抗系の実験に切り替えたのはある意味よかったかもしれません。

今後も「ヒルクライムを速く走るためには?」シリーズは継続していきたいと思います。

CL vs TLRをやりたかったのに、替えタイヤの片方がTLに気がついた時の絶望感たるや。

2023.4.18 

誤字脱字の修正をしました。


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