以前より投稿している「交通事故に遭ってしまった話」について、いよいよ今回が最終回(の予定)です。
ここまで、事故の経緯(vol.1)・事故後にやるべき事(vol.2)・物損被害の弁償(vol.3)、について書いてきました。
最後が、ケガの治療と慰謝料についてです。
なお、今回が一番精神的に疲れるやりとりが発生しました。
是非疲れていただいて笑、「交通事故には遭わないぞ」と決意を新たにして頂ければと思います。
通院~治療終了まで
事故の翌々日(土曜日事故、週明けの月曜日です)自宅近くの整形外科に行って、前距腓靱帯の捻挫(平たく言えば、足首の捻挫)で、全治4週間の診断を受けました。
私は、特に病院や医師の拘りは無かったので、最初に診察を受けた「自宅近く」の整形外科に週2~3回程度通院しました。
通院は、超音波を出すマッサージガンのような機械を、自分で患部に当てるだけです。
治療の日は、医師と話はせずリハビリ室に直行直帰です。
機械が空いていれば、1回の通院で病院に滞在する時間は、15分程度でした。
後述しますが、支払いに待ち時間は発生しません。
事前に示された1ヶ月の治療を終えた時点では、足首に違和感が残っていました。
1ヶ月経った時点で1度医師の診察を受け、2週間追加で治療をして通院は終わりました。
幸い、足首の違和感も無くなり、事故前と同じように生活・サイクリングが出来るようになりました。
事故後の通院に関する教訓
「自宅近く」の整形外科に通院したことは失敗だった
私は、「自宅近く」の整形外科に通院しましたが、これは、失敗でした。
前回までの投稿と一部内容が重複しますが、「職場近く」の整形外科に通うべきでした。
理由は、19時までの受付に仕事後だと間に合わない事があるからです。
もし通勤に1時間かかる人であれば、遅くとも18時には職場を出なければなりません。
職場の近くであれば、18:45分職場を出ても、滑り込みで通院する事が出来ます。(毎回ギリギリだと、クリニックからは嫌がられるでしょう…)
病院の費用は、医療機関から保険会社へ直接請求にすべし
交通事故でケガをすると、「○○整形外科」のような「クリニック」や、程度によっては「○○大学附属病院」のような大きい「病院」に通うことになります。
また、「手術だけ病院で、その後のリハビリは近所のクリニックで」というパターンもあり得ます。
その場合、どこに通院するかを自分で決めて、それを相手方保険会社に連絡します。
(私の場合は、相手方保険会社から、事前にどこに通院するか連絡するように指示がありました)
これは、治療費を相手方保険会社に支払って貰うためです。
一旦自分で費用を立て替えて、後日領収書と共に保険会社に請求するパターンもあるようですが、領収書の管理や書類の手続きが増えることを考えれば、最初から支払いして貰った方がラクだと思います。
また、治療費を一旦立て替えるパターンであれば、通院の都度会計を待つ羽目になります。
もし大きな病院に通えば、診察待ちだけで無く、診察後の会計の為だけにウン十分待つ事もザラです。
以上より、支払いは医療機関から保険会社へ直接請求にした方が、事故に関するストレスは減ると思います。
通院終了後の慰謝料請求について
私の事例に行く前に、まず、慰謝料に関して前提として必要な知識をおさらいします。
(最低限のレベルとなりますので、もっと詳しく知りたい方は、各法律事務所HP等をご覧下さい)
逆に、ご存じの方は読み飛ばしてください。
交通事故でケガをした場合、加害者から(加害者が保険に加入していれば、保険会社)慰謝料の支払いを受けます。
慰謝料は、大きく3つの種類(入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料)に分かれます。
その他、通院に必要な交通費・コインパーキング代・松葉杖のレンタル費用etcがあれば、実費で請求します。
今回の私の事故は、後遺障害と死亡は非該当の事故となりますので、入通院慰謝料のみに話を絞って進めます。
慰謝料は、金額を算出するテーブルが5パターンあります。
内訳は
自賠責保険基準での計算 1パターン
任意保険・裁判基準での計算 4パターン
となっています。
自賠責保険テーブルによる算出
1つ目が、自賠責保険(強制保険)の計算パターンです。
慰謝料は、「通院回数×4,300円×2」と、「治療期間×4,300円」の少ない方となります。
もし「全治1ヶ月のケガで10回通院した」場合
上記計算式に当てはめると
10回×4,300円×2 = 86,000円 と 30日×4,300円=133,000円 となりますので、少ない方の86,000円が慰謝料となります。
任意保険・裁判基準による算出
一般に、自賠責保険は「法律で決められた最低限度の補償」です。
しかし、交通事故を起こす・被害に遭って裁判で慰謝料を決定する場合、上記の自賠責保険以上の慰謝料が認定されます。
この、裁判で示される金額と自賠責で補償される金額の差を埋めるのが、「○○損保・○○自動車保険」の名がつく、任意保険です。
巷で言う「無保険のクルマ」は、この任意保険未加入のクルマを指します。自賠責保険は、車検に通過していれば加入しています。
(自賠責に加入しないと車検に通過しません、の方が正しいのか?いずれにせよ、車検を通す時の費用に、自賠責保険代が含まれています)
話を、任意保険基準の慰謝料計算に戻します。
任意保険・裁判基準の慰謝料計算は、
- 「ケガの大小(概ね骨折の有無が分かれ目のようです)」
- 「弁護士介入の有無」
それぞれのYes/Noで、計4パターンの金額テーブルがあります。
そして、個別の状況に応じて4つ何れかのテーブルが適用され、通院期間に応じた慰謝料が支払われます。
ここまでを一旦まとめると、
慰謝料は、
- 「ケガの程度・治療期間(≒通院回数)・弁護士介入の有無」以上の3点で、およそ金額が確定します。(繰り返しになりますが、後遺障害慰謝料と死亡慰謝料は、今回割愛しています)
- 「車検を通過している車両であれば自賠責保険」に加入している」ので、自賠責保険の計算式で算出された金額については、必ず自賠責保険から受け取る事が出来ます。
- 但し、自賠責で補償される金額は、交通事故被害者が本来受け取るべきそれよりも、非常に低い水準に設定されています。
適正な慰謝料を受け取るためには、裁判基準に基づいた計算で慰謝料算定をして貰う必要があります。
なお、任意保険基準で算定すると、一般には「自賠責基準と裁判基準の間」で算定されるようです。「一般は」が、今回のキモです。
私の場合 ― 保険会社基準で算定すると、自賠責と金額ピッタリ一致でした ―
ケガの治療が終わり、相手方保険会社に通院の終了を伝えました。
私の場合、自宅から徒歩圏の整形外科に通ったので、交通費の発生はありません。
ただ、通院のために仕事を切り上げる必要がありましたので、翌日早めに出勤して仕事をしたりもしていました。つまり、通院期間中は残業(残業代)が減りました。
この減った残業代も、過去数ヶ月の勤務実績表と給与明細を提出することで、「通院(事故)のために発生した損害」と認められる可能性があります。
ただ、増えるかもしれない数万円と交渉・書類の準備の手間etcを考えて、私は請求しませんでした。
つまり、「通院の回数」「治療期間」「ケガの程度(軽症)」の3つの情報で保険会社が持つ計算テーブルで慰謝料算定をして貰うという、最もシンプルなパターンです。
私も、上記3つの情報に基づき自賠責基準で計算をしていたので、「最低幾ら」になるかを把握していました。
どのような基準で慰謝料を算定・決定するかは各保険会社の自由ですが、自賠責の金額を下回る示談提示をすることは、法律上認められていません。
なお、「そのお金で新しい自転車買えるかなー?」とか余計考えが脳内をよぎった事も否定はしませんが、「示談提示された金額が妥当か」をこちらで判断する必要があります。
その意味でも、「最低幾ら」は把握するべきだと思います。
数日後、一通の封筒が損○ジャパンから届きます
中には、慰謝料の見積書と、示談手続きの説明書と示談書が入っていました。
そして、慰謝料の欄には、私が自賠責基準で計算した金額とまったく同じ金額が記載されていました。
ビックリしましたね。自分が計算した最低金額と、ピタリ一致していたので。
ただ、ある意味ラクでした。ピタリ一致ですから、何をどう計算してこうなった?とか考える必要がありませんので。
つまり、損○ジャパンは私と自賠責保険の同額(仮に20万円とします)で示談をして、一旦支払った20万円を自賠責から回収しようという魂胆です。
そうすれば、彼らは事務手続きの作業こそ発生しますが、懐は1円たりとも痛みません。
被害者の私からすれば、相手方自賠責への請求作業を相手方の損保ジャパンに代行して貰った、という感じです。
この辺りから「何のための保険会社なのか」と腹が立ってきました。
適正な慰謝料を貰うべく電話するも、「たんとうしゃには、まったくきいてない」
翌日損◯ジャパンの担当者に、なぜ自賠責と同額の見積もりなのか、という確認の電話を入れました。
今のところ弁護士は入っていませんから、裁判基準で慰謝料が計算されることは無いと理解していましたが、自賠責とピタリ一致は正直予想外でした。
今回は「軽症・後遺障害なし・通院1ヶ月半の事故」です。
ハッキリ言ってしまえば自賠責の金額だろうと裁判基準だろうと、金額に大きな差はありません。
ただ、私としては
- 金額の大小よりも、事故の被害(ケガと、通院に伴う負担・手間)を正当に評価して頂きたい事
- 裁判基準で算定は出来なくても、自賠責と同額では納得しがたい事
も伝えました。
しかし、何を言っても返答は「当社の規定に基づいて算定した結果です。それ以上の回答は出来かねます」の一点張り。
ここまでのやりとりで、ハッキリしました。
「損◯ジャパンは、この事故について、絶対に自賠責保険と同額でしか示談をしない」と。
話が全く進まないので「一度検討します」と言って電話を切りました。
私としては、もともと裁判基準で示談するつもりはありませんでした。
弁護士が入ったところで金額が大して増えるわけでも無いですし、寧ろさっさと終わらせてしまいたかったので、提示された額にゴネるつもりはありませんでした。
ただ、自賠責と同額ではさすがに納得は出来ません。
理由は、「自賠責で定められた基準は、被害者が本来補償されるべき基準を大きく下回っている」からです。
こうなってくると、もう時間が掛かろうが何だろうが、満額回答以外は拒否しようとさえ思えてきました。
最強の武器「弁護士費用補償特約」
自分の契約する自動車保険に弁護士費用補償特約が入っていて、行使できることも把握していましたが、使っていませんでした。
なんとなく気が引けたのと、事故に関する色々なやりとりも社会勉強になるかなぁと思いまして。
また、物損(壊れた自転車の被害)について、「相手保険会社→自転車査定業者→弁護士→私」と、弁護士が入る事で情報伝達に時間が余計に掛かる事と、査定の内訳が不透明になることを嫌った意味合いもあります。
結果的に、自転車の査定業者さんと色々な話が出来たので、この判断は個人的には良かったと思いました。
と言うことで、ここまでは特に弁護士を入れる必要性を感じていませんでした。
ただ、今回ばかりはそうも行かないようです。
自分の契約する保険会社に電話し、損◯ジャパンとやりとりした内容と、弁護士費用補償特約を使う旨をお伝えしました。
なお、特約で弁護士をつける場合、
- 私が弁護士を探して、費用は保険会社に負担して貰う
- 保険会社が弁護士を探して、以下同
上記2つのパターンがありました。
今回は、特に揉める要素も無く、事故に強い云々は関係の無い案件だと判断し、後者で進める事としました。
(弁護士探し・アポ・面会・手続きetcが億劫だった、というのも大きな理由ですが)
その後、損◯ジャパンの担当者に電話をして「担当弁護士が決まり次第、弁護士から連絡が行く」旨を伝えました。
弁護士介入後の話 ー弁護士の先生に全てお任せですー
弁護士が入ると、もう個人としてやる事はありません。
2週間くらい経ったころ、自分の保険会社から担当弁護士が決まった旨の連絡がありました。
同時に当該弁護士から電話があり、今後損保ジャパンとのやりとりは全て弁護士が代行して行う旨の説明を受けました。
その後、月日が流れること3ヶ月ほど経ったでしょうか。
弁護士から電話がありました。
内容は
- 今の条件で、考えられる満額の示談を引き出した事実の連絡と、その請求根拠・請求内容の説明。
- もし金額に不服がある場合、幾らなら納得出来るか(但し、仮に100万!と言ったところで、それは当然無理な相談です)
私は、裁判基準満額での示談で十分満足でしたので、その電話で示談をする旨を伝えました。
そこからさらに数日後、損◯ジャパンから、弁護士から説明のあった金額が記載された示談書が届きます。
ここに、署名捺印して返送すれば、終了です。
数日中に、記載された金額が口座に振り込まれます。これで、事故に関する手続きは全て終わりです。
逆に、今後何があっても、この事故に関して追加で何かを請求する事は出来なくなります。
人身事故に関するまとめ
「交通事故を正当に評価して貰いたければ、弁護士の介入が必須」
素人が何を言っても「自賠責基準」だった慰謝料が、弁護士が入って少し(数ヶ月)の時間を費やす「だけ」で、慰謝料が数万円変わるサマを、目の当たりにしました。
私の場合は数万円ですが、入院や手術を伴う場合や後遺症が残った場合、その金額は数百万円単位で差が出ます。
特に、大きな事故であれば通院中の対応(必要なタイミングでレントゲン写真を撮影するetc)にも弁護士の目が必要になって来るようですので、通院と同時進行で弁護士への相談をお勧めします。
これは、「本来受け取るべき慰謝料を失うような行動をしない」意味合いが強いようです。
ただ、費用特約が無ければ弁護士費用もタダではありません。
相場として、着手金20万円~。成功報酬10%くらいでしょうか?(事務所・担当弁護士によります)。
自賠責と裁判基準の慰謝料を比較して、上記費用を払ってでも弁護士を入れるかの判断が必要になります。
また、費用をかけずに弁護士を入れる方法として、交通事故紛争センターに相談するという方法があります。
私は使っていないので詳細を述べることは出来ませんが
- 費用は無料
- 担当弁護士は、中立の立場で示談を斡旋してくれる(こちらの100%の味方ではない)
- 営業所が全国に数カ所しかなく、数回出向く必要がある。
- 金額は、概ね裁判基準に近い額で示談できる(らしいです)
- 時間は、数ヶ月待ちの事もある(らしいです)
上記に納得出来れば、有効な方法ではないでしょうか?
私の場合は、保険に弁護士費用特約があったので、敢えて使う理由は見つかりませんでした。
事故被害から得た学び・全てのまとめ
- 交通事故に遭ったら、どんな小さな事故でも警察に届け出ること
→警察による事故証明が作成されなければ、事故は「無かったこと」になります。
法的に「事故が発生していない」以上、後から痛みが出ようが事故起因によるケガとはみなされません。「発生してない事故」で、ケガが発生するハズがありません。 - 交通事故に遭ったら、どんな小さな事でも直ぐに病院に行くこと
→概ね1週間を過ぎると、ケガと事故との因果関係を認めて貰いにくくなるようです
人身事故として事故証明を作成する場合、医師の診断書が必要になる場合があります。私の場合、保険会社経由で警察に行ったか、持参したか、失念してしまいました。 - 通院は、出来れば職場近くがオススメ
→仕事後に通院する場合、自宅より職場近くの病院の方がラクです。 - 慰謝料は、モノとケガで別
→モノの慰謝料は、「いま幾らの価値があるか」を査定され、その金額が弁償されます。
→ケガの慰謝料は、ケガの大小と治療期間(通院回数)でほぼ決まります。 - ケガの慰謝料は、弁護士が入らないと適正な金額を受け取れない可能性が高い
→弁護士相談費用は、30分5,000円程度です。「後遺症慰謝料・通院の頻度etcで本来もっと取れたのに」を防ぐ意味でも、通院を始める前後で一度弁護士に相談する事をオススメします。 - 弁護士を入れる場合、費用は25万円程度。割に合うかは「慰謝料の表」で確認を。
→弁護士費用補償特約があれば、上記金額は発生しません。利用しない理由がありません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
読まれた皆様の、安全なサイクリングライフを心から願っています。