私は、お恥ずかしながらロードバイクに乗っていて、事故に遭った事があります。
詳細は別記事に譲りますが、こちらは「道路を走っていた」過失を取られた10:90の被害事故でした。
事故に遭った時、最も気になる事の一つが「お金の話」では無いでしょうか?
この記事では、私が経験した事故の「物損被害に関するお金のこと」について書いていきます。「人身被害」については、後日別記事にて掲載予定です。
先にポイント・結論からいうと
- 物損事故の弁償→仕組み上、弁護士を入れようが入れまいが、帰ってくる金額は殆ど変わらない(筈です)。
- 人身事故の慰謝料→素人が保険会社相手に交渉しても、ラチがあきません。素直に弁護士を入れて下さい。
- 損得で語るべき話ではない事を大前提踏まえた上で敢えて言うなら、事故に遭うと「損」です。これは、事故被害者が「得」しないような仕組みになっているからです
- 事故の内容次第では、被害者が数十万円単位のお金を「加害者に払う」必要があります(後述します)。
必要であろう予備知識
私は、事故に遭う前は「事故に遭ったら慰謝料を貰う」「事故を起こしたら慰謝料を払う(ただし、保険に入っていれば保険会社が払ってくれる)」。
その程度の知識しかありませんでした。
クルマも運転するので、優先道路や過失割合のルールは当然把握していましたが「事故が起きた後の手続きやお金の話」は、よく分かっていませんでした。
どのような知識レベルの方がこの記事を読まれるか分かりませんが、仮に上記のレベルでは、以降の内容を理解するのは難しいと思われます。そこで、私が事故後に学んだ、最低限必要になるであろうレベルの知識を以下に共有します。
外で自転車に乗れば、事故に遭う確率は必ず一定程度発生します。この程度の知識は、知っておいて損は無いかと思います。
なお、細かな事やもっと正確に理解したい方は、Google検索で弁護士事務所のHPなどをご覧ください。逆に、ご存じの方は読み飛ばし推奨です。
もし誤っている箇所があれば、ご指摘頂けると幸いです。
物損事故は、被害に遭った「モノの弁償」のみ
事故の被害が物のみ(exフレームが折れた)であれば、物損事故。被害が人間にも及ぶ(ケガをした・死亡した)場合は人身事故となります。
物損事故は、壊れた物に対して減価償却分(予備知識2で説明します)を差し引かれた後、同等の物に交換or金銭弁償して終了です。
人身事故の場合のみ、上記物損被害の弁償とは別に、入院・通院期間に応じた「慰謝料」が発生します。
- 物損事故=モノの弁償
- 人身事故=モノの弁償+慰謝料
と書くのが、分かりやすいでしょうか?
減価償却について
「モノ」は、購入から年数が経つと価値が減り、減価償却期間を過ぎると価値はゼロになる。依って、モノが事故で壊れた場合、事故時点で残っている価値分しか弁償されない。
これが、物損事故における減価償却の考え方の基本です。
なお、ロードバイク(おそらくクロスバイクやマウンテンも)の償却期間は「5年」です。
減価償却に関する小ネタ 昔は減価償却が無かった?
私がロードバイクに乗り始めた2010年頃は、減価償却を考慮されず「事故に遭って新品になった」という話を、確かに見聞きしたことがあります。
ただ、当時と比較して今は、街・道路にスポーツ自転車が増えました。それに伴い事故も増えたのでしょう。保険会社が、古い自転車にも毎回全額払うのはおかしいぞ?となったのか、昨今ロードバイクは減価償却の対象となっているようです。
ネット上では「減価償却は企業会計の指標であり、イチ個人の私有物に適用する概念ではない。よって、ロードバイクは減価償却の対象とならない」と書かれている記事も目にします。
私は、それがどのような経緯を辿って変わったのかは、分かりません。少なくとも言えるのは、数年前の事故で、私は減価償却分を差し引かれました。
自転車の査定業者さんや弁護士の先生に聞いた話でも、「現在は減価償却分を差し引かれる」で回答は一致していました。
例) 50万円で買った自転車を、3年後に30:70の事故で全損した場合
上記の場合、弁償金額がいくらになるか計算してみます。
まず、上記の自転車は、3年分の価値が目減しています。よって、事故時点では50÷5×(5-3)=20万円の価値があると判断されます。
次に、こちら側の過失分が弁償金額から差し引かれます。今回30:70の事故ですので、20×(1-0.3)=14万円です。
これだけでは終わりません。事故によって相手の「モノ」を傷つけた場合、過失分はこちらが弁償しなければなりません。
仮に、板金修理代5万円とします。5×(1-0.3)=1.5ですので、1.5万円支払いが必要です(実際には、貰う分から1.5万円差し引かれる)。14-1.5=12.5になりました。
よって、被害者は、12.5万円相当の自転車で弁償してもらうか、12.5万円現金で受け取るかを選択します。
これで、物損事故は、示談終了です。
イチ被害者としては、納得し難い内容かもしれません。ただ一方、「3年乗って新型が出た頃に事故に遭ったら、新モデルになって返ってきたわ」が罷り通るのもおかしな話です。
これは、仕方ないと思います。どうしても上記に納得がいかなければ、弁護士を入れて裁判を起こすしかありません。
被害者なのに、お金を請求されるかもしれない
先の「5年価値ゼロ」を杓子定規に当てはめると、5年以上乗った自転車で事故に遭っても、ビタ一文貰えません。ただ、それではあまりに被害者が報われないと言うことで、40%程度の弁償が最低限保証されるとかされないとか。
これは、事故後に私がどこかの弁護士事務所HPか何かでチラっと目にしただけですので、交渉次第・相手方保険会社次第になると想像します。
そして、ここからが余談ですが結構重要)。最低40%が補償されるとはいえ、古い(かつ廉価)自転車で外車や高級車を相手に事故を起こすと、以下のような状況が発生します。
それは、「被害者なのに、相手のクルマの修理代を払わされる」というパターンです。
例) 7万円の自転車を、5年後に40:60の事故で全損。相手は黒塗りの高級外車で、ドアが凹んだ
こちらのケース2で考えてみます。(この事例、個人的には自転車の方が悪いと思うのですが、これでも車の方が過失を多く取られるのですね…そっちに驚きました)
話を戻します。こちらが貰う金額は、先の最低40%確保の理屈から、上限28,000円です。
ただし、一時停止不停止の過失40%があるため、11,200円が、相手方から貰える弁償金額です。
一方、外車のドア1枚交換は、約30万円~が相場です。
30万円の40%はこちらで修理代を負担しなければなりません。12万円です。
貰う金額は11,200円。一方支払う金額は120,000円。差し引き-108,800です。
この場合、壊れた自転車は戻ってこず、約10万円の「お支払い」のみが発生します。(ただし、自分が保険に入っていれば保険会社に払って貰えるはず)
「いや、被害者は私なんですけど」と言いたくなるかもしれませんが、過失割合と物損事故はこの様に清算されます。
私の事故の場合
やっと本題です。私の事故は、前述の通り過失割合10:90の被害事故でした。
相手の軽トラックは、左前バンパーの部分に傷が入り、板金の修理代は50,000円でした。このため、軽トラの修理代5,000円が最終的な弁償額から引かれます。
物損被害弁償の大きな流れは
- 査定のための現物確認を、私と査定機関で実施。
- 後日、査定機関が保険会社に査定金額を提出。
- 保険会社より「弁償金額は幾らです」と、書面で連絡が来ます。
- この金額に納得が出来れば、書類に署名捺印をして返送すれば、終了。数日以内にお金が振り込まれます。
- 納得が出来なければ、「納得出来ない理由と、納得出来る金額・その金額の根拠」を保険会社へ提出します。
- 保険会社と査定機関で弁償金額を再度検討し、「3」に戻ります。以下同。
私の場合、事故発生からおよそ1ヶ月後に弁償金の振り込みまで終わりました。
査定業者さんは、相手方保険会社の業務委託という立場です。最初は「保険会社側の人間か」と不安に思いましたが、私の担当になった方はフラットな立場で査定してくれた印象です。
事故に遭った自転車はどうなる?
被害にあった自転車と、ホイール・コンポその他付属品は、今回は私の手元に残りました。相手側保険会社からは「引き取ります」とも言われませんでした。
「0:100の事故は相手方に所有権が移るから引き渡しに応じなければならないが、10:90ならこちらに所有権が一部残るから引き渡しに応じる必要は無い云々」というネット上の記事も目にしましたが、真相は申し訳ありませんが不明です。
私のように「フレームだけ」の事故であれば、残ったコンポはローラー用バイクに使い回す事もできます。
事故に遭った時、気になる事項の一つだと思います。過失割合や金額の交渉と同時に、事故車の扱いについても保険会社と協議してください。
事故車を回収するかどうかは、相手の保険会社・事故によって対応はマチマチのようです。
リムブレーキ車で事故に遭ったら?
近年、ロードバイクはディスクブレーキ化が進み、リムブレーキ車は市場から無くなりつつあります。ここで、一つ問題が発生します。「フレームだけ弁償されても困る」のです。
おさらいになりますが、3年乗った定価50万のリムブレーキ仕様の「フレーム」が全損になった場合(ホイールやコンポは無事とする)、20万円の残存価値が認められます。この場合、事故時点で市販されている20万円のフレームに交換して貰うか、現金で20万円受け取るかを選択します。
しかし、近年のディスクブレーキ化に伴い、「20万円のリムブレーキ仕様のフレーム」は、殆どのメーカーにラインナップされていません。よって、同等品との交換は出来ません。
では20万円を現金で貰ったとして、20万円のディスクブレーキ「フレーム」しか購入出来ません。結果、手元には20万円のディスクフレームと、リムブレーキのホイール・コンポが残ります。コレでは、自転車として完成しません。
この問題、私は「ディスク車とリム車で互換性のない部品がある」事を説明した上で、「ディスク車と互換性のない部品については、フレーム同等の全損被害を受けた」という扱いで、弁償して貰いました。
分かり易いところでは「ホイール・シフター・ブレーキ本体」でしょうか。私の場合は、FD/RDも弁償して貰いました。
逆に、クランク・メーター・ライト・ボトルケージ・ペダルはディスク車でも使い回しが出来る部品のため、弁償対象外でした。
全く知識方だと、この交渉は苦しいと思います。購入した自転車店に相談するか、詳しい知人に同席してもらう事をオススメします。
査定額に納得がいかない場合は?
査定された額や弁償対象となる部品の範囲に納得がいかない場合、自分で「この部品は○○だから、この金額は低すぎる(この部品も互換が無いから、弁償対象です等々)」と、査定担当者さんと交渉する必要があります。その場合、客観的な根拠をこちら側で用意する必要があります。
一般には、ヤフオクやBici Amore 等の、直近の取引価格が参考になると思います。
私の場合は、ホイールだけ購入時期に対して安価な査定がされていたので、訂正をお願いしました。(トレーニング用ホイールでしたので、数千円程度の誤差レベルでしたが)
最終的な支払うのは相手方保険会社ですが、自転車の被害額は「査定機関と私」で、購入時期と消耗度合い・中古相場額を基に決定します。
なお、話が横道に逸れますが、査定は「安定のシマノ・近年はスラムも善戦・カンパは苦しい」というお話をお聞きしました。
中古相場的にはシマノが最も値崩れしないそうです。シマノコンポは、金額を期待出来る一方、カンパはユーザーが少ないこともあり、このような査定の場面ではかなり苦しい額になるとか。
カンパやユーザーをどうこう言う意図はありませんが、カンパは苦しい査定額になる傾向にあるという現実は、知識として頭の片隅に知っておいて損は無いと思いました。
まとめ 物損はさほど揉めない(はず)
物損事故、特に自転車の被害額については、弁護士が入る余地は殆どありません。
ほぼ機械的に「カタログ定価と使用年数」で、金額が決まるからです。揉めるとすれば「過失割合」と「減価償却の年数」でしょうか。
これもネット上で見た話ですが、「減価償却の年数を3年で提示する」保険会社があるようです。これでは不当に査定金額が下がってしまいます。
この場合は、弁護士に相談をした方が良いと思われます(若しくは、自分で判例のコピーを保険会社に渡すか)。
他にも、査定業者さんと「世間話」をしましたが、色々書いたら既にこれだけの文字数になってしまいました。他にも興味深い話を伺うことができたので、機会があれば別途書こうと思います。
さて、ここまでで解決したのは物損被害だけです。人身の方は、未だこれからです。
ちなみに、人身の方がモメます。「1円たりとも払うものか」という、保険会社の本気を見ました。人身は、きちんとした弁償を受けたければ、弁護士介入必須です。
長々とお付き合いありがとうございました。誰かの、何かの為になれば幸いです。
つづく。