レビュー 機材

SARIS H3 1年間使用レビュー


2022年のワイズロード福袋でSarisH3を購入し、1年が経過しました。福袋なのに「購入しました」という文章もおかしな気はしますが、実質中身が分かる販売方式でしたので(定価で特定可能だった)、「購入しました」としておきます。

使い始めて1年が経ち、長期目線でのレビューをしてみたいと思います。購入直後のファーストインプレッションは、よろしければこちらの記事をご覧下さい。

結論から言えば、概ね満足しています。

合格ラインが65%として、個人的満足度は80%くらいです。ただ、この満足度は福袋の価格(実売9万円)の場合です。もし購入額が定価の14万円であれば、満足度は65%程度。定価であれば、後継モデルのH4や、他メーカーの製品を検討しても良いと思います。

以上が、1年使ってみた率直な感想です。

なお、私がH3を購入した後に、後継モデルのH4が発売されました。H4は使ったことがありませんので、後継品との比較は申し訳ありませんが出来ません事をご了承下さい。

Saris H3 良かったところ

Tacx NeoSmartからの買い換えですが、非常に造りがしっかりしており、走行音も静かです。1年使用しましたが、振動・騒音に変化(購入当初より五月蠅くなったetc)は感じません。前機との価格差を考えると、非常に満足度は高いです。

この手の機材は「トラブル無く日々安定して稼働すること」が何より大事です。そこを1年間維持できたのは、非常に良かったと思います。

負荷の掛かり方についても、以前のタックスよりは自然な印象です(負荷設定100%の場合)。実走しているような感覚とまでは思えませんが「急激に負荷が重くなってギアチェンジが間に合わない」と言うことはありません。

なお、2023年1月からは、シマノ12sコンポのスペシャリッシマで運用しています。

RDは本体接触スレスレ(若干当たってる?)にはなりますが、12sのスプロケットをとりつけても、特に問題無く動いています。

Saris H3 不満点

唯一且つ最大の不満が、購入当初から懸念したゼロキャリブレーションの方法です。キャリブレーションの曖昧さ加減と煩さが、非常に気になりました。

キャリブレーションの方法は「中強度で10分程度の暖機運転後、時速37km/hになるまで漕いで、画面の目盛が消える(ゼロ校正が終わる)まで空走させる」というものです。

これ、個人的には非常に手順が曖昧だと思います。計測機器のゼロ校正方法が曖昧では、何のための計測機器なのか?…というのが、率直な感想です。

まず「中強度」と感じる強度は人それぞれです。運動経験の無い方が初めてZwiftをするのであれば、恐らく150wくらいでも中強度でしょう。私の場合、中強度といったら210w(3.5w/kg)前後をイメージします。

そして、定義の曖昧な中強度で10分暖気した後に、暖機が完了しているのかを判断する方法がありません。クルマにおける水温計のようなものがあれば良いのですが、その様な指標はありません。

さらに気になるのが、真冬に気温10℃の部屋で一切暖機運転しなくても、ゼロ校正自体は出来てしまいます。「本体が低温のため校正できません」的な画面が出るのかと思いきや、そのような仕様にはなっていません。

この曖昧さに加えて、ゼロ校正する際の空走音が次の懸念点です。

参考までに動画を撮影しましたので、よろしければどうぞ(音量注意)

トレーナーで負荷を掛けている12秒頃までは非常に静かだと感じていますが、空走中は大きいラチェット音が部屋中に鳴り響きます。幾ら窓を閉めていても、音は恐らく外に漏れていると思います。家族や近隣住民が寝静まっている早朝に実施するのは、ちょっと躊躇します。

結局私は、音の問題点があり、1年を通して朝練前にはゼロ校正が殆ど実施出来ていません。計測機器の管理がこれで良いのか?という気はしますが、価格とのトレードオフとして気にしすぎないようにしている、というのが正直なところです。

ただ、後述しますが、ゼロ校正を掛けないとパワーデータが相当にブレてしまう事が分かりました。

パワーデータについて

先日シマノのパワーメーターを購入したため、Zwiftのワークアウトを使って数回デュアルレコードを取りました。データは全て別日に計4回、5分275w→5分255w × 4setのワークアウトで記録したパワーデータです。なお、シマノは、毎回走行前にゼロ校正を掛けています。

結論から言うと、トレーニング前にSarisのゼロ校正を掛ける・掛けないで、シマノのデータとは結構な乖離がありました。キャリブレーション方法が曖昧とは言え、掛ける事でかなり数字は安定するようです。当たり前の事ですが、走行前に都度キャリブレーションが必要だと思います。

  • ログA Sarisゼロ校正無し 2023.2.2 (5分275w→5分255w × 4set  キツすぎで28分で終了)
  1分 5分 10分 20分
Saris H3 279w 275w 265w 265w
Shimano FC-R8100-P 322w 304w 301w 283w
  • ログB Sarisゼロ校正あり 2023.2.4 (5分275w→5分255w × 4set)
  1分 5分 10分 20分
Saris H3 279w 274w 264w 264w
Shimano FC-R8100-P 282w 277w 268w 267w
  • ログC Sarisゼロ校正あり 2023.2.7 (5分275w→5分255w × 4set)
  1分 5分 10分 20分
Saris H3 276w 274w 264w 264w
Shimano FC-R8100-P 287w 283w 272w 272w
  • ログD Sarisゼロ校正なし 2023.2.10 (5分275w→5分255w × 4set)
  1分 5分 10分 20分
Saris H3 275w 274w 264w 264w
Shimano FC-R8100-P 297w 293w 284w 282w
  • ログE Sarisゼロ校正あり 2023.2.11  (60分FTP走)
  1分 5分 10分 20分
Saris H3 291w 284w 279w 275w
Shimano FC-R8100-P 286w 281w 276w 272w

 

一見「Sarisの方が、全体的に数字が安定しているじゃないか」と思われるかもしれませんが、それは必然です。Sarisが吐きだした値をZwiftの画面に出力して、それを見ながら私が強度を微調整しているからです。

「Sarisが275wを吐き出す強度で漕ぐと、裏でShimanoはこのパワーを記録していました」と言うのが、本表の見方です。

そういった視点で見ると、走行前にゼロ校正をしたログBとC・ログEは非常に近い値を示しています。特にBとEは、ほぼイコールと言って差し支えないかと。

なお、Saris H3とShimano FC-R8100-Pのパワー計測精度がいずれも±2%です。ピタリ一致が難しい事は認識しており、Ave265wのワークアウトであれば10w程度は乖離しうる筈です。

この記事では「どちらがハッピーだ」とか「どちらが下振れしすぎだ」という事は書きませんが、走行前にゼロ校正は必須だと思えるデータになりました。

H3とH4の違い

公式サイトのこちらを見る限り、H4は、概ねH3の改良版という印象を受けます。「H4ならでは」という視点で見ると、H4で正式に12sに対応しました。H3でもスプロケットは取り付け可能でしたが、ローギアに入れた際リアメカのケージが本体に接触する事例があるようです。

先に記載しましたが、私は幸運にもその様なことは無く、スペシャリッシマ(12sアルテグラ)を取り付け出来ています。

なお、個人的に不満だったキャリブレーションの方法は、こちらのマニュアルを見る限り、H4も継続と思われます。

H3を購入するリスク

H4と比較して、古いことです。何を当たり前のことを?という話ですが、古い製品は新しい製品と比較して、メーカーサポートが早く切れてしまいます。

ここからは、やや強引な推測も若干含む事をご了承下さい。

H3は、2020年1月に発表されました。そして、H3が3年後の2023年2月現在もカタログ落ちしていないことを踏まえると、ソフトウェアのアップデートは2026年初頭までは対応されると予想します(あくまで予想ですが)。

以上から、スマトレのソフトウェア更新対応を製品発売から6年と仮定すると

  • H3=残り3年
  • H4=残り4年半

使用可能と考えられます。そして販売価格(定価)が

  • H3=約14万
  • H4=約18万

です。この金額を1年あたりの金額に直すと

  • H3=46,666/年 (残り3年)
  • H4=40,000/年 (残り4年半)

以上より、「本体の故障が無ければ」という前提にはなりますが、定価ベースであれば計算上H4を購入した方がオトクと考えられます。従って「実売価格が12万円を切っていればH3が買い・それ以上であればH4」と考えて良いのでは無いでしょうか?

本体そのもの(ハード)の耐用年数を算出するのが難しかったので、ソフト面から計算してみました。

前提が「壊れなければ」ですが、そもそもスマートトレーナーは、どれくらいの耐用年数を想定して設計されているのでしょうか?

まとめ

  • 別のパワーメーターを所有しており、Sarisのパワーソースに依存しない人:個人的にキャリブレーション方法が不満なので、別のパワーソースでトレーニング出来る人はアリだと思います。
  • キャリブレーションの音が特に問題ない人
  • (H3であれば)セール価格で買える人
  • MP1を使いたい人:これはSarisだけの特権です(私は店頭でちょっと乗っただけなので、良し悪しの評価は出来ません)

これらに当てはまる人は、Saris H3のトレーナーをオススメします。

逆に、他のパワーメーターが無い人やキャリブレーション方法・騒音が「チョット気になるなぁ」と思う方は、他社製品を視野に入れてみても良いかと思います。似たような金額(定価ベース)で、スマホアプリでゼロ校正できる製品もあります。

この投稿が、スマートローラー台選びの参考になれば幸いです。


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