昨日、Canyon Ultimate CFR2022 (キャニオン アルティメットCFR)の試乗会に参加させて頂きました。
本投稿は、試乗の感想です。なお、ポジションを出し切っていない試乗車に1時間半乗っただけで「インプレ」と書くのは無理があるので、表題も本文内も「試乗記」としています。
いつもの如く、結論・試乗した感想と印象を先に言うと、ヒルクライムに於いてはもの凄く良く走る自転車だと思いました。一方「買いたいか?」と聞かれたら、両手をあげて「絶対買いたいです!」とまでは言い切れません。「用途・場合による」と思いました。
何かのご参考になればと思います。
試乗会概要
試乗会は事前予約制で、1コマ40分。
私は運良く同じ車体を2コマ連続して予約する事が出来た為、「1コマ目の40分+返却作業用の20分+2コマ目の40分」で、計1時間半強試乗が出来ました。(実を言うと、もう更に1コマ空いていたのですが、占領しすぎるのもアレですのでそこは自重)
走行ルートは、返却時間に間に合えば自由との事だったので、
”止々呂美IC (会場)〜妙見山ヒルクライム(山頂までは行かず)〜野間峠下り〜野間峠登り返し。最後時間に余裕があったので、高山公民館への登りを追加し、返却”という、33kmで830m程度のヒルクライムコースを設定しました。
妙見山ヒルクライム・野間峠・高山公民館は、いずれも私が関西に来てから何十回と走っているルートです。大阪北部で自転車に乗られる方であれば、すべてお馴染みのルートだと思います。過去の機材と比較してどうか?という意味でも、勝手知ったるルートを走る事が出来たので非常に良かったです。
なお、スペシャリッシマとフレーム同士の比較するため、手持ちホイール(MAVIC COSMIC SLR45)を持参しました。しかし、後輪のローター径が合わず(私160mm、試乗車は140mm)断念。
試乗車そのままのスペックで走行する事になりました。
試乗車スペック
- Canyon Ultimate CFR Sサイズ
- メインコンポ:shimano DURA-ACE R9200
- ホイール: shimano DURA-ACE C36
- タイヤ:シュワルベ ProOneTT (チューボリート運用)
完成車では、DTのローハイトハイスペックホイールが付属するとの事ですが、どのような事情なのか今回はシマノの最新山岳用ホイールがアッセンブルされていました。
試乗の印象
コースと時間の都合上、ヒルクライム中心の感想です。
漕ぎ出し
軽かったです。ただエモンダ・スペシャリッシマと比較して劇的にどうか?というと、そこまで大きな差は感じませんでした。スペック相応だと思います。
平坦巡行
コース内に平坦を走り続ける区間がありませんので、コメント無し。
登坂
個人的には、登坂において最も魅力を感じました。感覚的にも、タイム的にも素晴らしい性能を有していると思います。
シッティング
緩斜面/急勾配問わず、シッティングでケイデンス・ペースをキープしながら登った場合。
感覚としては、コレはエモンダ・スペシャリッシマと大きな違いを感じませんでした。慣れの問題も多分にあるとは思いますが、コレなら別に買い替える程でもないな、というのが最初の印象でした。(Canyon Ultimate CFRが悪いという事ではなく、エモンダとスペシャリッシマが有れば十分という意味です)
ダンシング
緩斜面を、ダンシングでペースをキープした場合。
まずそもそもの話をすると、バイクが軽いので振りが非常に軽いです。その軽さがタイムに繋がるかは一旦さて置き、乗っていて非常に気持ちが良かったです。
そして本題に戻り、緩斜面のダンシング(ペース維持)のフィーリングについてですが、最もフィーリングが好みなのはスペシャリッシマだと感じました。
スペシャリッシマの半年レビューでも書いたとおり、負荷を掛けた瞬間の反応の良さが、絶妙に自分の好みの範囲に収まっている印象があります。ただ、コレがフレームの差なのかホイールの差なのか、単に慣れの問題なのかは判別がつきませんでした。
ペースアップの切り替え
シッティング/ダンシングでペースアップした場合、特にシッティングの巡航からダンシングのペースアップに切り替えた時。これは、Canyon Ultimate CFRが良かったです。
巡行からペースアップの切り替えが、異常にスムーズでした。例えとして相応しいのか分かりませんが、エモンダの切り替わりがetap11sだとしたら、Canyon Ultimate CFRは最新の12速Di2でした(実際のコンポもそうなのですが)
ペースアップする瞬間のフィーリングに関しては、車体・足周りの重量・フロント周りの剛性が影響しているように感じます。肌感覚として、5点満点で評価するなら
- Canyon Ultimate CFR:5
- スペシャリッシマ:4.5
- エモンダ:3.5
という感じでしょうか。
ヒルクライムのタイム
大阪北部の野間峠という峠で、(ストラバによると、セグメント距離3.25km・平均勾配8.3%)5倍を目安に負荷を掛けて走行してみました。これまで、数えきれないほど登り、個人的なベストタイムは2020年3月の10:15。ストラバのKOMは、ツールド沖縄表彰台常連のマツケン氏で9:03。
ここを、「9/11の志賀高原ヒルクライム以降まともに練習してないし、とりあえず行けるとことまで5倍弱で登ってみるかー」と登った結果…
ベストタイムに5秒及ばない、過去2番目のタイムでした。
基本東向きに登るコースなので、超絶追い風なんていうオチもありません。
自分なりにトレーニングを重ねて、「StravaのKOMは無理でもトップ10には載りたいなー」くらいの感覚で幾つかの峠TTをしていますが、それでもこの野間峠は10:15でランクインできていません。それが、1ヶ月弱の「オフ明け」で、自己ベストに5秒だけ及ばない、過去2番目のタイム…
(リリースのタイミング的に絶対不可能ですが)もしこのバイクで今年の富士ヒルと志賀高原ヒルクライムを走っていたとしたら、富士ヒルゴールドと志賀高原総合3位という目標は、確実に達成できていたと思います。
それらに130万円弱の投資価値があるかを一旦さておけば、「レースの成績・峠のタイムはカネで買える」と確信しました。本当に、異常なほど速い。正直言って、衝撃でした。
ダウンヒル・コーナリング
試乗車のハンドルが高く、かつ右前ブレーキでまともに操作ができなかったので(私は10年近くずっと右後ろブレーキ)評価不能です。直線の下りは、ホイールリムハイトの問題・ハンドル高の問題もあると思いますが、スペシャリッシマの方がスピードの乗りは良さそうに感じました。
購入したいか・オススメしたいかどうか
私個人の意見ですが、「用途による」と思います。有無を言わせず「絶対買った方がいいですよ」とまでは推せないなと判断しました。
私はいま、TREKのエモンダ(リムブレーキ)とBIANCHIのスペシャリッシマ(ディスクブレーキ)の2台を所有しています。
2台の使い分けとしては、
- エモンダ:ヒルクライムレースの本番。ストラバetcでヒルクライムのタイムを狙いたい時。
- スペシャリッシマ:それ以外全部(トレーニングライド、気晴らし目的のサイクリング・ロングライド、ブルベ、その他)
このように使い分けています。
ここにもしCanyon Ultimate CFRを加えるのであれば、エモンダは引退。上記のエモンダ枠をCanyon Ultimate CFRに置き換えて、スペシャリッシマは残すと思います。
私にとってCanyon Ultimate CFRは、エモンダの完全上位互換。他方、スペシャリッシマの完全上位互換とはみなしませんでした。
「絶対にオススメ」ではない理由
ハンドル周りのポジションを完全に出せる人が限られるからです。
今回の試乗や1時間のヒルクライムレースであれば、多少ポジションが出ていなくても、なんとかなってしまいます。私自身、もし来年のヒルクライムレースで試乗したCanyon Ultimate CFRをお借りできるのであれば、「レースだけは」間違いなく使います。むしろ、1万円くらい払ってでも使いたいです。
ただ、逆に普段のトレーニングやブルベetcのロングライドであれば、積極的に使いたいとは(いま試乗した限りでは)思えません。
以下は、「Canyon Ultimate CFRを最大限自分のポジションに合わせて200km走ったわけではない」ので、推測の話にはなってしまいます。ただ、往々にして自分のポジションをバチっと出せない自転車は、どこかで身体に痛みや「出力を出しにくい」といった問題が発生します。
現状の販売システムでは、この問題が起きるか起きないかは、買ってみて・乗ってみないと分かりません。そして、問題が起きたところで、殆ど対処のしようがありません。幾ら「痛みが出ます」とフィッティングを受けても、そのポジションをバイクに落とし込めなければ、文字通り絵に描いた餅です。
まとめ
私の中では
「いくらヒルクライムが速いからと言って、自分のポジションが出せないリスク・痛みが発生するリスクを抱えた自転車に払える金額ではない。これは(現状の販売システムが変わらない限りは)、ヒルクライムでタイムを出すためのセカンドバイク」
と位置付けました。
2台持ちで、ヒルクライムレース用に特化するなら最高だと思います。私自身そんな予算は全くありませんが、エモンダの後継にするなら是非欲しいです。ハンドル周りの販売システムさえご一考頂けたら、購入候補の最右翼間違いなしです。
最後に、このような機会をご提供いただきましたキャニオンジャパンの皆様、ありがとうございました。