今年の2月に初めてのディスクブレーキ車を購入し、約半年が経過しました。
リムブレーキ車(エモンダ)の代役を前提として購入したディスクブレーキ車(スペシャリッシマ)でしたが、有りがたい事にエモンダは修理され戻ってきました。結果、ずいぶん贅沢・豚に真珠感は否めませんが、リムブレーキ車とディスクブレーキ車のハイエンドモデルが手元に揃ってしまいました。
そこで今回は、「ディスクブレーキ車を初めて使ってみて・買ってみて・半年乗ってみてどう感じたか」を考察してみたいと思います。いま、ディスクブレーキ車購入を検討している方の参考になれば幸いです。
なお、いつもの如く先に結論から言うと
「私にとっては、リムブレーキ車から買い換える意味はさほど大きくなかった」
これが率直な感想です。ディスク化のメリットは実感できましたが、それが投資額に見合っているとは思えませんでした。
私が思う、ディスクブレーキ車を買うべき人は
- 6.8kgに縛られるレースを走る人
- ロードレースを走る人
- 今流行のグラベルを走りたい人
- 通勤やレースetc、雨でも日常的に走る人
これらの人は、ディスク車の方が良いと思います。逆に、上記にあて嵌まらない人は「もう1~2年はリムブレーキ車で待ってみては?」というのが、実際に購入して半年使ってみた感想です。
補足すると、購入したスペシャリッシマディスクには満足しています。ディスクブレーキ車購入後、ヒルクライムレースの直前とレース本番以外は殆どディスクブレーキ車に乗っています。
ただそれは「スペシャリッシマ」に満足しているのであって、「ディスク車」に満足している訳ではありません。
「エモンダ→スペシャリッシマ」の変化(増車)は良かったのですが、「リムブレーキ→ディスクブレーキ」への変化は、そこまででも無かった。購入は「待てるのであれば、ちょっと待ってみては?」というお話です。
なお、これは2022年10月時点での考えです。1年後には、状況が変わっている可能性は否定できませんことを、お含みおきください。特に納期周りについては、ある程度状況が改善されている可能性が高いと想像します。
ディスク車の購入は待ってみては?と考えた理由
率直に言えば「納期が不透明。かつ、納車待ちの間に新技術製品・新規格品が出る可能性が(通常時より)高い」から。
この状況であれば「どうしてもいま乗り換える理由」がなければ、1~2年待っても良い気がします。
例えば、ホイールひとつ取ってみても「フックド/フックレス・CL/TL・リム内幅」etcまだまだ発展途上な印象です。
フレームも、向こう1~2年で新UCI規格に基づき設計されたモデルが、各社から発表されるでしょう。いま購入したフレームが単に旧UCI規格というだけで有ればまだ良いのですが、数年後に「コレが最適です」という、太い幅のタイヤを取り付け出来ない可能性があります(上限28Cのスペシャリッシマのことだ)。
また、各メーカーが新規格に基づいた新製品を少しずつ発表していますが、話を聞く限り日本国内への供給台数は非常に限られています。加えて、ミドルグレードのモデルであれば、今後ハイエンドの技術が下りてきて、性能の向上が期待出来ます(ただしお値段も?)。
まとめると、購入しても「向こう数年以内にほぼ確実に旧規格になる」以上、今がディスク車購入に手を出すタイミングとして適当なのか?といわれると、個人的には疑問です。
個人的にも、エモンダが壊れなければ乗り換え(買い足し)の予定は全くありませんでした。スペシャリッシマディスクについては運良く即納だったので購入しましたが、もし数ヶ月待ちであれば買いませんでした。
その意味でいうと「規格とかどうでもいいじゃん」という仕様のAethosなら、納期含めて良いかもしれませんね(私も、スペシャリッシマと本当に迷いました)。
リムブレーキ車とディスクブレーキ車、それぞれのメリット・デメリット
ここで改めて、リムブレーキ車とディスクブレーキ車それぞれのメリット・デメリットを、私なりにざっくり整理してみました。
ロードバイクは、ブレーキ方式とホイールの素材で、大きく4パターンにグループ分けする事が出来ます。(コンポの機械式or電動、タイヤシステムetcでも分ける事が出来ると思いますが、ココでは一旦省略)
(鮮明なリンクは、メリットデメリットよりどうぞ)
各欄の抜け漏れや、先のエートスのようにこの枠に当てはまらない車種のあると思いますが、おおよそ読まれている方と似たようなイメージになるのでは無いでしょうか?
また、リムブレーキに関しては「これ以上技術的な進歩がない」ので、「いま購入すれrば最高」と言い換えることが出来ます。これは、メリットデメリットどちらとも言えると思います。
逆にディスク車は、「今買っても来年にはもっと良いものが(ほぼ確実に)出る」ので、「今後技術的な進歩がある」ということを、メリットデメリットの両方に記載しました。
この様に、それぞれのメリットデメリットを列挙してみて、私は改めて「もう数年はリムブレーキ車で良いのでは?」と判断しました。
リムブレーキで十分だと考えた理由
「リムブレーキ×カーボンホイール」ヒルクライムではまだまだ一線級
詳細は、こちらの実験の通りです。この実験結果をどのように判断するかは読まれた方にお任せしますが、個人的にはリムブレーキバイクは未だ一線級だと思いました。
ただ、ロードレースの場合は速度域が異なります。ロードレースを走るなら、リムorディスクの議論というより、空力性能を改善した最新のフレーム(結果自ずとディスクブレーキ車になる)が欲しくなると思います。
また、カーボンリムブレーキの制動力は心許なく感じました。これは、ディスクブレーキ車と乗り比べた上で明確にデメリットとして挙げておきます。ディスクブレーキと比べると、制動力が弱く扱いもシビアです。
下り・コーナリングスキルによって「カーボンリムのリムブレーキで十分ですよ」という人はいても「リムブレーキの方が優れている」と判断する人は少ないかと。半年前までは、この仕様で普通にダウンヒルしていたのですが、人間の慣れって凄いなぁと思います。
「リムブレーキ×アルミリムホイール」 今なお万能
私の場合、カーボンリム(Roval)に対して、アルミリムのゾンダに履き替えると200g程度重量が増加します。また、空力・軽量性を含めた走力はカーボンホイールに見劣りします。
とは言え、20分のヒルクライムがアルミホイールを使うと3分遅くなる訳では有りません。加えて、リムブレーキ車体の場合、ブレーキ面においてはアルミリムに優位性があります。
金属リムブレーキは、タイヤを簡単にロックさせる程度の制動力があります。週末にサイクリングを楽しむ道具・仕様としては、コレで必要十分です。個人的には、制動力不足を感じる場面はほぼありません。勿論、下り・コーナリングスキルによって変わるとは思いますが。
デメリットは、「今後先細りの規格」という事でしょうか。業界の流れ的に、いま以上に進歩する事は無いし、今後面白い製品が出てくることもほぼないでしょう。
また、これはリムブレーキ車全般に言えることですが、車体の性能そのものは必要十分でも、部品の供給がいつまで続くかは不透明です。特にシマノのハイグレード製品は、今後数年以内にディスク仕様への切り替えが予想されます。
2022年時点でもリムブレーキ車だと思う一方、今から性能を求めてリムブレーキ車を買い足すのは、個人的にはあまりオススメ出来ません。走行感が好き・輪行がラクetc、用途を割り切った人でなければ、後述する「ディスク×カーボンホイール」が無難だと思います。
ディスクブレーキ車について
「ディスク×カーボンホイール」 買うならコレだと思います
今から新たに自転車を購入するのであれば、コレが最適解だろうと思います。
先日の、疲労している300kmブルベ終盤や、勾配10%の九十九折りの下りを走るようなシチュエーションでは、ディスクブレーキの安心感は群を抜いていると感じました。軽く握るだけで大きく且つ安定的な制動力を発揮するので、非常にラクです。
ただ、逆に言えば、そのような極端なシチュエーション以外「絶対ディスクブレーキが良い」とは言い難いと感じました。巷でよく言われていますのでここでは割愛しますが、「制動力そのもの(ブレーキを掛けてから止まるまでの距離)」は、アルミリムのリムブレーキ車と大差ありません。
そして一般論として、ディスクブレーキ車はフレーム・コンポ・ホイールの重量がリムブレーキ車のそれより嵩む傾向にあります。
某ホイールメーカーのサイトには「ディスクブレーキ化することで、リムにブレーキの負荷が掛からないため、結果大幅にリムを軽量化できる」とか書かれているのですが、2022年になったいまも「リムブレーキのそれと比較して、大幅にリムが軽いホイール」を見つける事が出来ません。
界隈の普段の動向からして「大幅にリムが軽いホイール」を作れたのであれば、殊更にそれを強調して宣伝文句にしそうな気がしますが、そのような謳い文句の商品を目にした記憶もありません。むしろ、剛性を確保するためにスポーク本数が増えるetcで、1,400g台後半でも「ディスク用としては軽い方」とまで言われてしまう始末です。「ディスク用としては軽い方」ってなんぞ?
また、ディスクブレーキ車でペダル込み7kg中盤※の車体を組もうと思ったら、それ相応のコストが必要です。手元に100万円あっても、北米・欧州のメジャーブランドでは殆ど選択肢は有りません。
(※いまやZwift専用機と化した、10年前に購入したロードバイクが、ペダル込み7.6kgです)
そして、各社が「速く走る自転車」を追求した結果、フレーム毎の専用品を使われた車体が増えました。
ハンドルやステム・サドル周りが一体型やフレーム専用品になり、皆が皆本当に自分のポジションを出せるのか、少々疑問に思っています。
これまで、各メーカーがステム長やハンドル幅・リーチにあれほどのラインナップを揃えていた事を考えると、専用品はバリエーションが少ないように感じます。勿論、バリエーションを増やせばコストに跳ね返ってきます。各社そこのバランスを最大限考慮した結果が、いまのラインナップなのだとは思います。
…と、諸々ディスクブレーキ車に思うことを書きました。
とはいえ、「じゃあリムブレーキ車買うわ」と考えたところで、ハイエンドはもはや市場には殆ど流通していません。私も数ヶ月前に探しましたが、それはもう宝探し状態です。メーカー・色はもちろん選べず、自分のサイズが見つかれば御の字という状況でした。
となれば「いま新たに自転車を購入するのであれば、現実的にはディスクブレーキ車。そして、カーボンホイールで少しでも全体を軽くするのが最適解」と考えます。
「ディスクブレーキ×アルミホイール」 試乗だけのため評価しかねるが
メリットデメリットの欄で記述したとおり、リムブレーキであればアルミホイールを選ぶメリットがあります。ただ、ディスクブレーキ車でアルミホイールを選ぶメリットがあまり見当たりません。というより、「コスト以外、カーボンホイールのデメリットが無い」と書くべきでしょうか?
リムブレーキの場合、ブレーキをかける度にリムは消耗してきます。一方ディスクブレーキの場合、消耗するのはディスクローターです。ディスクローターは、そもそも消耗品です。
貧乏性の私は、リムブレーキの高額なカーボンホイールは、リムが磨耗するので普段使いしたくありません。ただ、ディスクはそれが無いので、カーボンホイールを普段履きしています。(ディスクの方がホイールへの負荷が高いという意見も目にしたことがありますが、その主張がどこまで正しいのか、私は判断がつきません)
ディスクブレーキ車を購入する前、とある「アルミホイールを履いたミドルグレードフレーム」の車種に試乗しましたが、「これなら、先のZwift専用機でいいや」というのが、正直な感想でした。これが、ミドルグレードのカーボンホイール(&軽量タイヤ)になると、かなり良くなりましたが。
その印象から、やや極論かもしれませんが「ディスクブレーキ車=カーボンホイール」と言っても良いと考えました。
私も含めた多くの人に、予算の壁が立ち塞がると思います。思いますが、ディスクブレーキ車を買う以上、ホイール・タイヤのアップグレードまで含めて予算組みをしないと結局後で高くつく可能性があることは、頭の片隅に認識しておくべきだと思います。
その上で、私が仮にミドルグレードのディスク完成車+ミドルグレードのホイールを購入する予算があるなら、アルミのリムブレーキフレームを頑張って探して、残った予算で良いホイールを購入すると思います。
(この仕様でも、おそらく50万くらい必要ですよね)
運良くセール品に巡り逢えば、前者より10万円以上安く仕上がって、走りも遜色ないかむしろ上回るはずです。コンポetcにも拘らず、ラフに使える良いオモチャになると思います。
そして、わざわざその仕様のバイクを買うくらいなら「もう1年待ったら良くない?」という結論に至りました。
まとめ
2022年10月現在の状況として
- リムとディスク、双方にメリットデメリットがある。ディスクの方が規格としては新しいが、かと言ってリムの完全上位互換では無い。
- よって、ユーザーがどちらを購入するか選択できる環境が理想。ただ、メーカーも2種類の開発・併売は出来ない(ヒトモノカネ全部倍必要なので、ムリ)
- では、いざディスクブレーキ車を買おうとしても、納期が極めて不透明。
- ミドルグレードに関しては、今後ハイエンドの技術が下りてきて、大幅に性能が伸びる可能性がある。(ただしお値段も大幅に?)
概ねこのような環境です。よって、移行を迷っている人はむしろ、今お持ちの自転車を「来たる時」まで大切に乗るべきだと思いました。
「単純に欲しいから買う」は勿論アリ。「どうしてもでは無いけど買い換えようかな?」であれば「待ち」。これが、2022年10月時点での私の結論です。