先日発売になった、ミシュランのパワーカップを購入しました(厳密には「していました」が正しいのですが、それは一旦さておき)。
レースも含めて数100km使ってみて、流通も始まったようなのでインプレッションを書いてみました。
購入を検討されている方のご参考になれば、と思います。
結論から言うと、想定される競合タイヤであろうコンチネンタルGP5000比で「コレは!」という様な、明確な違いは感じませんでした。強いて言うなら、漕ぎ出しは少々軽いかな?程度。
耐久性や耐摩耗性の評価は出来ていませんので、それも含めたタイヤとしての評価は、後日(数ヶ月後)となります。
なお本製品、リム内幅15・17mm幅のホイールへの取り付けを想定した古い仕様(新ETRTOではない)の可能性があります。購入する前に、取り付ける予定のホイールリム内幅を、いま一度ご確認・測定されることをオススメします。
リムの内幅って何?新ETRTO?という方は、こちら をどうぞ。
公式見解が出ていませんのでざっくりとした説明に留めますが、近年発売されたCLホイールに本タイヤを取り付けても、ミシュラン社が想定した性能を発揮出来ない可能性があります。大手メーカーのディスクブレーキ用ホイールは、軒並み不適合といって(ほぼ)差し支えないかと。使えないことは無い、という感じでしょうか。現物を確認していないのでいい加減な事は言えませんが、経緯的にTUであれば問題ないのか?という気もします。
もっと詳しく知りたい方は、こちらのブログが参考になると思います。
ホイールとの適合に関しては、メーカー・輸入代理店の公式見解が待たれます。
POWER CUPについてアレコレ
購入の動機
私は、「コンチネンタルGPシリーズのCL/TLを使っておけばとりあえず間違いない」と考えています。サイドが弱いという世の評価だと思いますが、個人的にはそれも含め、グリップ耐久性耐パンク性すべて申し分なし。
エモンダを購入してから出先でパンク修理をした記憶がありませんので、3年半以上パンクをしていない筈です。糸がほつれてくるという問題もありますが、切ったら良いだけですのでとくに気にしていません。
そんな私が今回乗り換えた一番の理由は、GPシリーズに「TL」が無くなってしまったからです。
こちらで記載しましたが「TLは好きだけど、TLRは管理や相性云々が面倒。TLが無くなるなら、いっそCLに戻そう。でも、全部コンチネンタルも面白くないな」と思っていました。そして、丁度交換のタイミングが近づいたとき、本製品が発表になりました。そのような流れから、今回ミシュランタイヤを試してみることにしました。
重量
4本(2set)購入しました。カタログ公称値の215gに対して、それぞれ214g、216g、216g、221gでした。
1本ハズレが有りますが、遭遇率的には1/4。そのハズレ個体も公称値に対して3%以内の誤差ですので、まあこんなモンって所でしょうか。他社製品では205gの公称値に対して230gとかも見ますので、許容範囲だと思います。225g超えていたら、ちょっと萎えるかもしれません。
組み付けについて
Roval CLX50(リムブレーキ)、Mavic CosmicSLR45(ディスクブレーキ)のホイールに組み付けています。コンチネンタルのGP5000TLの難易度を10としたら(私が使ったことがある範囲では、あれが一番キツい)、7くらいでしょうか?
最後の1/5くらいは、力が必要です。上手な人ならタイヤレバーを使わず装着できると思いますが、私は4本とも迷わずタイヤレバーの力を借りました。
追記
後述しますが、Roval(エモンダ)での走行感覚が悪く、チューブに原因があると考えMaxxisの軽量モデルに交換しました。その際、タイヤを一旦外して再度取り付けましたが、2回目の取り付けはいとも簡単に完了しました。
その間実走したのは40km程度なのですが、それだけでもビードが伸びたのでしょうか?もし新品で組み付けに難儀した場合、一旦余ったホイールにタイヤレバーで組み付けて暫く寝かせておくだけでも、固さはマシになるかもしれません。
乗ってみた印象
エモンダとスペシャリッシマディスクで、5km程度のヒルクライムを3本ずつ走っています。当日の体重59.5kgで、空気圧はメーカー指定下限の5.0barに揃えました。最初の印象は、
- エモンダ(Roval Clx50):漕ぎ出しの軽快感はやや悪化した印象。コーナリングは良い。
- スペシャリッシマディスク(Mavic CosminSLR45):軽快そのもの。コーナリング良し。
でした。
なぜ対照的な印象を受けたのかについては、使うチューブが影響したように思います。詳細はこちらに記載していますが、エモンダはブチルチューブ、スペシャリッシマディスクはラテックスチューブでテスト走行しています。なお、元々のタイヤは、コンチネンタルとグッドイヤーのTLです。
CL化に伴い、機構から何から全て変わっているので、単純な比較ができないことは付記しておきます。
下りとコーナリングについては、イメージしたラインをイメージ通りに走ることが出来ました。グリップが弱く、外に膨らんでしまうような感覚はありません。特に、スペシャリッシマディスクに取り付けてあったタイヤは、全天候タイヤからなのかコーナーでのグリップに心許ない感覚がありましたが、パワーカップはそのような挙動は一切ありませんでした。
コンチネンタルGP5000CL/TLの「寝かせても全然滑らない!」という感覚とはやや違いますが、しっかり路面を捉えている印象です。
実は、富士ヒル本番もこのタイヤを履いたエモンダで走行しましたが、ヒルクライム性能・ダウンヒルのコーナリング性能には特に不満を感じませんでした。強いて言うなら、ゴールドを達成して「Power Cupのお陰で富士ヒルゴールド獲れました」と書きたかったのですが、そこは筆者の実力不足でした。
2022.6.29追記
冒頭に記載したとおり、本製品はリム幅15・17mmのホイールを想定したタイヤの可能性が否定できません。従って、リム幅が広いホイールほど、走行感も悪化する傾向にあると考えられます。
私が実験当日そこを感じ取って「エモンダでの走行感はイマイチ良くない」と感じたとは思えませんが、追記しておきます。
価格
税込み7,500円です。GP5000はCLにも関わらず1万円を超えた事を考えると、お求めやすい方だと思います。パナレーサーには敵いませんが、昨今の自転車用品の値上げを考えれば十分アリだと思います。価格に関しては、私は偉そうなことを言える立場ではありませんので。
本タイヤの仕様について
SNSにて「Michelin Power Cupは旧ETRTO設計の可能性がある」という投稿を目にしました。
投稿主の方と少しばかりやりとりをして、「そんなまさか?」と思い、取り付けたタイヤの寸法を実測しました。
- Roval Clx50 (20.9):29.0mm
- Mavic Cosmic SLR45 (19):27.6mm
- CAMPAGNOLO Zonda (17):27.0mm
- mavic open pro (15):26.0mm
でした。(ホイールの後ろの数字は、リム内幅)
今回購入したのタイヤは25cモデルですので、新ETRTO設計であれば、Mavic Cosmic SLR45に取り付けるとタイヤ幅が丁度25mm幅になる筈です。それが、実測すると27.6mm。
明らかに、25mmではありません。一般論として「旧設計(リム幅狭)のタイヤを新設計(リム幅広)のホイールに取り付けると、実測値は広がる」傾向にあり、今回のケースもそれに該当しています。
実測レベルでは、リム幅15mmのホイールに履かせた時、もっとも25mmに近い値となりました。
どうやら、新ETRTOの可能性は低くそうです。
新ETRTOについて思うこと
詳しい記載は、私が書くまでもなく幾らでもインターネット上にありますので、こちらもざっくりと。
新ETRTOとは、「リム内幅19mmのホイールに取り付けたとき、タイヤの実測幅が表記サイズになるように設計しましょう」という統一規格です。 2020年に決まりました。
ロードバイクのタイヤを購入するとき、「700×25c」や「28×622」といった表記を確認して購入すると思います。この小さい方の数字が、取り付け後の実寸法を示しています。
従来タイヤメーカーは、各社それぞれ独自の基準に基づきタイヤを製作していました。依って、同じ「700×23c」と表記されたタイヤでも、ホイールに取り付けてみるとタイヤメーカーによって24mmだったり22mmになったりしてしまいます。
これは、ホイールのリム内幅がホイール各社で異なることと、タイヤ設計時に想定しているリム内幅が、各タイヤメーカーで異なる為に発生します。
ユーザーから見ると同じ「700×23c」のタイヤなのに、取り付けてみるまで実際の幅が分からないのは、都合が悪い。これを「是正しよう」と2020年に欧州を中心に策定されたのが、新ETRTOです(と認識しています)。
そして、「これで一件落着」であれば良かったのですが、話はそう簡単では無いようです。
なぜなら、2022年現在発売されているホイールのリム内幅が、19mm幅以上のものが散見されるからです。
Roval、Bontrager、ShimanoのR9200シリーズetcここに全てを列挙することは出来ませんが、パッと名前が出てきそうなホイールのリム内幅は、既に21mm程度まで広がっています。
これでは、幾らタイヤを19mm幅前提に設計しても、また実測するとズレるじゃ無いか…。そもそもRovalなんて、2017年発表の時点で既に20.9mm幅なのに、なぜ3年後に「19cを基準にしよう」となったのでしょうか。
この調子では、数年後「新々Etrto」が策定されるのでしょうか?
話をMichelin power cupに戻します。
新ETRTO対応のタイヤは、パッケージにその旨の表記があります。
以下、パッケージ写真です。Keiさんより、画像を頂きました。ありがとうございます。
本製品、パッケージを確認する限り「新ETRTO対応」の表記はありません。従って「旧ETRTO」で設計されていても、それだけで「おかしい」と批判することは一応筋違いです。
とはいえ、です。この新ETRTOの話が決まったのは、2020年です。
「2020年の時点で『今後はこうしようぜ!』と業界単位で決めた話に対して、2022年発売の新製品が旧仕様で作られている(可能性がある)。それも、タイヤのニッチメーカーではなく、大手のミシュランで。」
コレは、多くの人は予想出来ないのではないでしょうか?私も、上記投稿がなされるまで、本製品は言うまでもなく新ETRTOに対応していると思っていました。
改めて、この世界は闇…じゃなかった、奥が深いなぁと感じる出来事でした。
まとめ
幅についてのSNS投稿があるまで、個人的には特に不満無く使用していました。
従って、幅の件に基づいて即「買うのは待て!」とは書けませんし、書きません。なんなら、今まで使っていたコンチネンタルのタイヤもすべて旧ETRTOですので、仮にこのタイヤが旧ETRTO設計だとしても、走れないという事はありません。そこは誤解の無きようお願いします。
実際、走行抵抗は低いのだろうと想像します。スペシャリッシマディスクで、走りの軽快感が良かったのは、事実です。
ただ、コンチネンタルに先立ってMichelinから新ETRTO仕様の製品が出てきたと思っていたので、凄く楽しみにしていました。その意味で、正直肩すかしを喰らった感は否めません。これなら、普通に新ETRTO仕様の他社製品で良く無いか?と。TUなら、純粋に良い製品なのかもしれませんが。
なお、しつこいようですが、メーカー側から本規格に関する公式見解は出ていません。あくまでも状況証拠的に「旧規格設計なのでは?」というお話です。
公式見解が出次第、その辺りはまた追記したいと思います。