機材

シマノのクランクが2本とも剥離対策品に交換になった話


2023年9月、シマノよりクランクのリコール(じゃない、無償点検)のアナウンスがありました事は、皆様ご承知の通りです。

先日、当リコール(じゃなかった無償点検。なお、このくだりを都度記載するのは面倒だし誰の得にもなりません、以下リコールと記述)に基づきクランクの点検を受けたところ、筆者が所有していたFC-9000PとFC-9100の2本のクランクは、いずれも対策品に交換となりました。

本記事は、リコールのアナウンスから対策品交換に至るまでの時系列ご紹介と、本件に関する注意点?ポイント?や感じた事を記載したいと思います。

点検対象ロットをお使いの方で、まだ点検を受けていない方の参考になればと思います。また、1度点検を受けた方は、1年後を目処に再点検を受けるようアナウンスがあったかと思います。今後、2回目の点検を受ける予定の方にも、なにか参考になる部分があれば幸いです。

両クランク剥離発覚までの時系列

FC-9000P

  • 2017年7月:シルベストサイクル箕面店(当時)にてFC-9000Pを購入
  • 2018年10月:TREK Emonda SLR購入。FC-9000P はcannondale systemsixからEmonda SLRへ
  • 2020年2月:山岳のタイムに対してパワーの低値を複数回確認
  • 2020年5月:シルベストサイクル梅田店(箕面店は閉店)経由で、パイオニア社にパワーメーターの修理を依頼
  • 2020年6月:パイオニア社より「パワー値異常の原因は、パワーメーターの故障ではなく左クランクの剥離が原因」との返答。使用を停止する。
  • 2023年8月:シマノ社よりリコールのアナウンスあり。当クランクが点検対象ロットに含まれることを確認
  • 2024年6月:ショップにて点検を受け、クランクの剥離を発見。対策品に交換となる
  • 2024年8月:シマノより、パワーメーター代の4万円が口座に入金される(予定)

FC-9100

  • 2020年12月:FC-9100Pのクランク剥離に伴い、知人より購入
  • 2023年8月:シマノ社よりリコールのアナウンス。クランクが点検対象ロットであることを確認
  • 2023年10月:某メーカー直営店にて点検を受け、「問題なし」の判定を受ける
  • 2023年11月:筆者が目視点検したところ、接着部に今後剥離の起点になり得そうな穴を発見。使用を停止する。
  • 2024年6月:別のショップにて再点検を受けた所、筆者が発見した穴を理由に剥離と認定。対策品に交換となる

各クランクの時系列は、以上です

感じた・思った事

FC-9000Pについて

  1. パワーメーターが無ければ、剥離に気がつかなかったかもしれない
  2. リコールのアナウンスが遅すぎたため、ムダな出費を強いられた人がいる
  3. 当時の修理をしないという判断は(結果論だが)適切だったように思う

パワーメーターが無ければ、剥離に気がつかなかったかもしれない

繰り返しになりますが、パワーメーターの値が低すぎる事でクランクの剥離に気がつきました。逆に言えば、パワーメーターを使っていなければ、もっと剥離が進み走行中にクランクが剥がれて落車していたかもしれません。そう考えると、このようなトラブルを抱えながらリコール発令までに時間を要したことは疑問です。

筆者のクランク剥離が認められた2020年当初から「シマノの(高価格帯)クランクは剥がれる」という噂は耳にしていました。ただ、それは年間1万km以上乗るようなヘビーユーザーや、頻繁に1000w以上のスプリントを繰り返す人に起こる事象だと考えていました。(筆者の月間走行距離は、当時からローラー台込みで5~700km程度)

よって、パイオニア社から「左クランク剥離」と結果が返ってきた際は非常に驚きました。

なお、パワーメーターが異常低値を示してからも暫くはそのまま使用していました。異常低値は、単なる電池切れや電子的な問題が原因であり、まさかクランクに問題があるとは思っていなかったからです。当時、異音等の記憶はありません。剥離がもっと進んだらどうだったのかは分かりませんが。

ちなみに、リコールのお知らせが出た後目視点検をしましたが、FC-9000の剥離箇所は分かりませんでした(前述したとおりFC-9100の穴は見つけました)。

なお、点検の際に先の時系列を説明したところ「クランクの剥離では無く、パワーメーターとクランクの接着の問題かもしれない。当時、出力値異常の原因はこのケースも散見された」との説明がありました。ただ、結果的にはパイオニアが指摘したとおり、左クランクに剥離がありました。剥離を見つけることができなかったのは、筆者のチェックスキルの問題だったようです。

プロショップが点検すれば筆者のような見落としは起こらないのでしょうが、改めて点検に出すショップの選択は重要だと感じました。

正式なリコールまで時間が掛かりすぎ

2020年に剥離が発覚してからメーカーの正式なリコールのアナウンスまで、実に3年以上も空きました。筆者はメーカーにリコールするよう働きかけをしたわけではありませんし、そもそも正式なリコールのアナウンスがあっただけマシなのかもしれませんが。

筆者のクランクが剥離するより前から、クランク剥離の話はネット上を中心に耳に(目に)していました。

剥離時点でリコールのアナウンスがされていれば、パイオニア社の「クランク剥離」という診断結果を基に、代替品に交換出来ていた可能性があります。後継としてFC-9100を購入する必要はなかったかもしれません。

また、剥離の判定を受けたor完全に剥離したクランクは、既に捨ててしまった人もいらっしゃると思います。捨てたクランク、手元に残しておけば数万円相当の代替クランクに交換出来たはずです。捨ててしまった皆様には、掛ける言葉もありません。こちらの記事を作成している時点では紛失していた(捨てた記憶はない)のですが、運良く見つかって良かったです、

すべては、剥離の問題に対してリコール対応をなかなか取らなかった事が原因だと思います。

(結果論だが)修理をしなくて良かった

パイオニア社から「左クランク剥離」の診断が下りた際、修理という選択肢の説明もありました。概算ですが、修理費用は5万円。内訳は、クランク本体の交換費用2万円、パワーメーター移植の工賃が3万円でした。

修理の内容を確認した上で、修理は見送りました。理由は大きく2つです。

1つは、今後右クランクが剥離して修理になる可能性があるから。もう1つは、左クランクが再度剥がれる可能性を否定出来ないから。

修理を見送った最大の理由は、右クランクが剥離して再修理&追加費用発生になる可能性が残るからです。右クランクが同じように壊れた場合、修理費用は右の方が高価になるはずです。交換クランク代+移植工賃は承知していませんでしたが、クランクの本体価格は構造上右の方が高いと予想されます。

5万円で修理をする事で、同時に右クランクの剥離を排除出来るのであれば、5万円で修理したと思います。ただ、今回の問題は左右で全く別の話です。

であれば、修理はせずに部品を後継品に交換するのがベターだと判断しました。結果的には後継品であるFC-9100系も同じ問題を抱えていましたが、少なくともパワーメーターと剥離し得るクランクはこのタイミングで別々にすべきと考えました。「録画機能付きテレビを買うと、片方が壊れただけで両方交換するハメになって高くつくから別々にすべき理論」と、考え方は全く一緒です。

修理を見送ったもう一つの理由は、まだ左クランクが剥がれるかもしれないから。これは文字通りであって、特に深掘りetcはありません。欠陥を抱えた製品(は言い過ぎかもしれませんが)を同じ仕様の別ロット品に交換したところで、また同じ問題が発生する可能性があります。

FC-9100

こっちは、本件で想定される最大の問題が降りかかりました。

店舗によって点検結果に差異が生まれるのは困る

繰り返しになりますが、2023年10月に某メーカーの直営店で点検を受けた結果は、「問題なし」の判定でした。ところが、半年後の2024年6月に別店舗で点検を受けたところ「筆者が見つけた接着部の穴を根拠にNG」という判定でした。「この穴が気になります」とお見せして、5秒以内には「これはダメ」と返答を頂きました。

なお、初回点検でOKの判定を受けてから2回目の点検を受けるまで、当該クランクはローラー台含めて1度も走行していません。従って、初回点検時と2回目の点検時でクランク接着部の状態が変わったとは考えにくいです。であれば

  • 1回目の点検では、接着部の穴を見つけることが出来なかった
  • 1回目の点検でも接着部の穴は見つけたが、NGと判断しなかった

このどちらかと考えるのが、自然だと思います。

シマノのマニュアルを確認したところ、代表的なNG事例が写真付きで掲載されていました。しかし、「クランク接着部の穴」というサンプルはありませんでした。

よって、筆者自身が点検した際「クランク接着部に穴を見つけたけど、これがNGかは判断がつかない。穴を起点に今後亀裂が入る・穴が広がる可能性を考慮すれば出来れば交換して貰いたいけど、ムリなら仕方ない」と言うのが率直な印象でした。

ただ、2回目の点検をお願いしたショップの店主曰く「ここから亀裂が入る可能性を否定出来ない事と、似たような事例で交換対応になった実績がある。十中八九まず交換対象になるであろう」との事でした。

結論。1回目の点検をしたショップが「穴を見つけることが出来なかった」「穴を問題視しなかった」どちらだったのかは分かりません。それよりも

点検を受けるショップによって合否が変わってしまうこと。これが、個人的には現時点での最大の問題だと感じています。

※言うまでもありませんが、2回目に点検を受けたショップで「この穴は問題なし」と判断されれば、その判断に従うつもりでした。

まとめ

OKが出ても、ご自身で定期的に点検を。

結論らしい結論がなくて申し訳ありませんが、自分を守る為にもこれが必要なのかと感じます。実際シマノ社も、ユーザー自身での自主点検を推奨しています。

皆さん、洗車の際はフレームに異常が無いか目視点検をするでしょうし、走行前にはブレーキの効きやタイヤの状態を確認すると思います。この「確認リスト」にクランクを追加するという事なのかなと。毎回は出来ませんし、めちゃくちゃ面倒ではありますが。

これから点検を受ける方向けのアドバイス。こちらは、正直無いです。

現状の点検システムでは、ショップ・点検者によって判断のバラツキが発生します。納得出来るかはさて置き、この事実はどうしようもありません。

強いていうなら、HPやブログ・SNSアカウントをお持ちのショップも多いと思います。それらの内容を確認して、極端にメーカー側に寄った発言が散見されるショップは、持ち込まない方が無難かな?と思います。全く問題の無い製品を「交換してくれ」と要求するのは論外ですが、問題を抱えている製品を「(これくらい)大丈夫ですよ」と言われて使った結果怪我をしても、その人はなんの責任も取ってくれません。最終的に自分を守れるのは、自分しかいないのです。

11速と12速どちらのチェーンリングも取り付け可能なら、8100系クランクも11sチェーンリングを対応させれば良いのにと思うのですが、まあ色んな事情があるのでしょう。


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