「ヒルクライムを速く走りたいとき、ホイールは重量とエアロどちらを優先すべきか?」
ヒルクライムレースを頑張りたい勢の私にとって、気になる問いの一つです。(以下、vol.1、2と同じ文章を書いても仕方有りませんので、割愛します)
vol.1は 平均勾配5.4%、登坂距離4.42kmのヒルクライム。「軽量ホイールが約2秒」良いタイムで走りました。
vol.2は 平均勾配7.2%、登坂距離2.40kmのヒルクライム。「エアロホイールが約7.5秒」速く走りました。
このように,一見辻褄の合わない結果が出てしまい、今回予定外のvol.3。ホイールレンタル期間の都合もあり、これが最終戦です。
いつもの如く、結論だけを知りたい方のために先に結論を書くと
平均勾配6.0%、登坂距離5.10kmのヒルクライムにおいては、「軽量ホイール」の方が登坂1本平均「10秒」速かった。
この結果を、似たような勾配の全日本マウンテンサイクリングin乗鞍(通称乗鞍)に置き換えると、計算上41秒の差が生まれると考えられます。
以上の結果となりました。
実験のきっかけ
vol.1、2と同様です。
2回の実験では,「緩斜面で軽量が勝り、急勾配ではエアロの方が速い」という、よく分からない結果になってしまいました。
テスト走行時の風、外気温が影響したと想像しますが、このままでは「どっちが良い」という結論は出せません。
ということで、平均勾配を丁度中間の6.0%に設定し、vol.3を実施。
ちなみに、乗鞍(平均勾配6.1)・赤城山(同6.3)ですので、今回実験した平均勾配6.0%という数字は、ヒルクライムレースでも「よくある」値です。
実験に際しての各種条件
比較対象ホイール
- フルクラム Speed 25 DB 2Way リムハイト25mm カタログ重量 1.285g
- フルクラム Speed 55 DB 2Way リムハイト55mm カタログ重量 1.580g
ホイールスペック詳細は、メーカー公式サイトよりどうぞ。
実験に使った機材
- Bianchi Specialissima Disc(2021)
- メインコンポ Shimano Ultegra12s
- ホイール 上記の通り
- タイヤ Pirelli P-Zero Race Wo 26c
- チューブ レンタル品につき不明。ただし55mmは、パンク修理の際にパナレーサーのRAirである事が確認できた。
- スプロケット Shimano Ultegra12s
- ブレーキローター Shimano MT800 160mm・140mm
実験コース
蓬莱峡で実施しました。なお、Stravaのセグメントとしては山頂の交差付近がゴールです。ただし、今回は約300m手前にある信号をゴール地点として、その数m手前にあるマンホールを基準地点としてタイム計測しています。
実験に際しての、その他条件
vol.1と同様に、260w・4.3w/kgで2本ずつ走行しています。(vol.2は、距離が短かったので4.5w/kgでテストしました)
また、過去2回は「軽量2本→エアロ2本」の順で走行しましたが、今回は「エアロ2本→軽量2本」に変更しています。他意は無く、単にローターとスプロケット交換の都合です。
それ以外、すべてvol.1・2と同様ですので割愛します。
実験結果
第3回の今回は、軽量ホイールが1本あたり約10秒速いタイムを出しました。
実験をしてみての感想・考察
まず、毎回の走行距離がバラバラでタイム差をイメージしにくいので、「距離20.0km、優勝者のタイムが60分前後のヒルクライムレースと仮定して、差を計算してみます。
1時間以上走るとはいえ60秒の差ですから「差が無い」というのは無理がありそうです。
また、こうなると「7.2%を4.3w/kgで走るとどうなったのか」が非常に気になりますが、時間の都合で出来なかったのが惜しまれます。
以上を踏まえて、一旦ヒルクライム「だけ」を走るという意味では
- 300g軽いローハイトホイールが、やや(若干)有利と思われる
- 300g重いエアロホイールでも、誤差に毛の生えた程度しか不利ではない
- パワー(速度)次第では、300g重いエアロホイールが逆転しかねない
上記以外にも、読まれた方の走力・スキル・経験etcによって、いろいろな解釈があると思います。
なお、オマケのvol.4として「距離1.01km 平均勾配11%」のコースでも実験しました。勾配のイメージ的には、富士あざみラインです。ここであれば、殆どの人が軽量ホイールを選択したくなるコースだと思います。
5倍で走行したところ、ほぼタイム差は生まれませんでした。そして、試しに300g重いエアロホイールの2本目は出力を20w上げて走行したところ、15秒も速くゴールしてしまいました。
「5w/kgで何十分も走れる人が、一体どれだけ居るのか」というご指摘はあると思います。私も走れませんし。
それよりも「パワーを20w・w/kgを0.3上げれば、平均勾配11%であっても300g重いホイールの方が速く走る」という事に驚きました。
ヒルクライムを頑張る勢にとって、pwrを0.3伸ばすのは本当に大変だと思います。ただ、だからといって機材の軽量化に走っても、残念ながら殆ど結果には繋がらない(可能性が高い)という事ですね。
機材毎に走行感は違ったので、自分好みの機材を探す・選ぶ事を否定しているわけではありません。あくまで「ヒルクライムでタイムを出したい・順位を上げたいから、(カタログ・web記事を見て)今より軽いホイールを買おう」と安易に考えるのは、「ちょっと待ってみては?」というお話です。
まとめ
第2回のまとめと繰り返しになりますが、300g重いエアロホイールが軽量ローハイトホイールと遜色ないタイムで登坂したのは、予想外でした。
なお、今回の実験は全て「ヒルクライムの個人TT」でした。ローテーション込みのレースであれば、また結果は変わる可能性があります。
また、「ホイールの総重量に意味はない、リム重量で比べるべき」etcのご指摘はあるかもしれません。ただ、よほどのコアなユーザーでなければ、各ホイールのリム重量リストなど持ち合わせていませんし、メーカーによってはそもそもリム重量を公開していません。
そのような理由から、今回は「同一メーカーの同グレード、リムハイトと総重量違い」で実験をしてみました。
ということで、今回の実験のきっかけになった
- 「ヒルクライムにおいて、軽量とエアロホイールはどのように使い分けたら良いの?」
- 「ホイールを1本しか所有出来ない場合、軽量ローハイトとエアロどっちを買った方が実用的だろうか?」
これら疑問に対する私なりの答えは、以下のようになりました。
ヒルクライムのタイムだけを考えれば、軽量ローハイトの方が若干有利になる場面が多いような気がします。ただ、体感できるタイム差は生まれないと想像します。
また、ヒルクライム能力の差は誤差レベルなので、個人的にはエアロ(オールラウンド)ホイールの方が使い勝手が良いと思います。
一連の実験が、2023年シーズンの以降の機材選びの参考になれば幸いです。