実験 機材

ヒルクライムでは、軽量ホイールとエアロホイールどちらを使うべきか? vol.2


「ヒルクライムを速く走りたいとき、ホイールは重量とエアロどちらを優先すべきか?」

ヒルクライムレースを頑張りたい勢の私にとって、気になる問いの一つです。(以下、vol.1と同じ文章を書いても仕方有りませんので、割愛します)

いつもの如く、結論だけを知りたい方のために先に結論を書くと

平均勾配7.2%、登坂距離2.4kmのヒルクライムにおいては、「エアロホイール」の方が登坂1本平均「7.5秒」速かった

これを、同じような勾配の乗鞍スカイラインサイクルヒルクライム(通称裏乗鞍)に置き換えると、計算上53秒の差が生まれると考えられる。

以上の結果となりました。

実験のきっかけ

vol.1と同様です。

「ヒルクライムや山岳ライドに於いて、軽量ホイールとエアロホイールはどのように使い分けたら良いの?」

「プロの選手は、コースによって使い分けが出来るだろう。ただ、アマチュアの私はホイールを複数所有出来ない。その場合、どっちを買った方がより幸せになれるの?」

これを「調べてみよう」の、第2弾です。

前回は、平均勾配5.4%のヒルクライムで「軽量ホイール」に軍配が上がりました。ただし、その差は誤差レベル。自分のや実験にケチをつけるつもりも有りませんが、風向き次第では逆転する程度の差でした。実際、5倍で踏んだら「エアロが逆転するかな?」と思いきや、軽量がまさか差を広げてしまいましたので。

なお、前回実験した5.4%という平均勾配は、富士ヒルとほぼイコールです。つまり、前回の結果は「300g重いエアロホイールは、富士ヒルで軽量ホイールと遜色ないタイムを出せる」と解釈する事も出来ます。

そして今回、平均勾配は7.2%です。これは、乗鞍ヒルクライム岐阜側(通称裏乗鞍)に該当する勾配です。

5.4%でも(誤差レベルとはいえ)軽量の方が速かったのだから、平均勾配が上がれば軽量が勝つのは目に見えているのでは?」

はい、私もそのように予想しています。

どちらかというと「平均勾配が7.2%に上がると、300g重いエアロホイールはどれくらい遅くなるの?」これを調べるのが目的です。

なお、結果は冒頭に記載したとおりです。

実験に際しての各種条件

比較対象ホイール

  • フルクラム Speed 25 DB 2Way リムハイト25mm カタログ重量 1.285g
  • フルクラム Speed 55 DB 2Way リムハイト55mm カタログ重量 1.580g

ホイールスペック詳細は、メーカー公式サイトよりどうぞ。

実験に使った機材

  • Bianchi Specialissima Disc(2021)
  • メインコンポ Shimano Ultegra12s
  • ホイール 上記の通り
  • タイヤ Pirelli P-Zero Race Wo 26c
  • チューブ レンタル品につき不明。ただし55mmは、パンク修理の際にパナレーサーのRAirである事が確認できた。
  • スプロケット Shimano Ultegra12s
  • ブレーキローター Shimano MT800 160mm140mm

実験コース

裏六甲ヒルクライムの後半2.4kmで計測しました。

ストラバで、事前に4km平均勾配6.5%というセグメントを見つけたので、当初はそこで計測する予定でした。なお、私は当該セグメントを走行したことが無く、当日初めて走行しました。走ってみたところ

  • 10%超の急勾配とほぼ平坦の繰り返しで、平均勾配があまり意味を成さないこと
  • 全区間、道幅がクルマ11.5台分程度しかないこと
  • 山頂が行き止まり(ゴルフ場)なので交通量は少ない反面、クルマの運転が雑で事故のリスクを感じたこと 

1本目の下山中、スマホ片手に運転したクルマが右カーブ (私にとっての左カーブ)をイン側スレスレに通過し、危うく接触するところでした。未舗装の路肩に逃げてギリギリ難を逃れましたが、早朝にゴルフ場から帰るクルマはいないという事で、対向車が来ない前提で運転しているのでしょう。ドライバーは殆ど前を見ていないようで、すれ違ってもなお私を認識して居なさそうでした。

車線・道幅があれば、スマホ運転されようが(極論)関係無いのですが、クルマ1台の道幅でコレをやられると、こちらが気をつけていても事故回避に限界があります。

結果、移動して環境が良く走り慣れた裏六甲での計測(ただし、工事で片側通行区間があるため、その信号をスタートとした)となりました。本当は、3.8km平均勾配6.9%の裏六甲フルコースで計測出来れば良かったのですが。

実験に際しての、その他条件

変更点は、パワーと本数のみ。上記の理由で登坂距離が短くなってしまったので、前回は4.3w/kgでしたが、今回は4.5w/kg(270w)でテストしています。

また、5.0w/kgの延長戦はせず、代わりに別条件を加えて2(6)登坂しました。こちらは、別途記事化予定です。

それ以外は、vol.1と同様ですので割愛します。

実験結果

エアロホイールが、1本あたり約7秒速いタイムを出しました。緩斜面では軽量が速かったのに。

このような結果が出た理由を考えてみました

なぜ、急勾配でエアロが良いタイムを出したのか?

  • 平均勾配5.4%のヒルクライムTTでは、「軽量ホイール」の方が約2秒速かった。(4.3w/kgで走行)
  • 平均勾配7.2%のヒルクライムTTでは、「エアロホイール」の方が約7秒速かった。(4.5w/kgで走行)

普通に考えれば、逆の結果になるはずです。

考えられる理由

風の影響

vol.1の延長線を台無しにした、風。この影響がもっとも大きいと想像します。

vol.2の今回、肌感覚にはなりますが、全体を通じて風は殆ど吹いていないように感じました。どちらかというと、前回の結果が向かい風の影響を受けたように思います。高強度(5)で走行していたので気がつけませんでしたが、もしかしたら軽量ホイールの延長戦では追い風が吹いていたのかもしれません。

完全なイコール条件であれば、vol.1でもエアロが速いタイムを出した可能性があります。両ホイールのタイム差が誤差レベル(2本平均2)ですので、私は風の影響でvol.1の結果がブレた可能性を最も疑っています。

気温の影響

特に意図はありませんが、vol.12ともに「25→55」の順で走行しております。早朝からテストを開始している為、後半ほど気温が上がった状態での走行となります。

一般的には、気温が低い方がタイムは出にくい傾向にあります。

ただ、「気温が上昇した」といっても5℃以内です。それがどこまでタイムに影響するのかは分かりませんが、一応可能性のひとつとして記載しておきます。

ペダリングの良し悪し

個人的には、アウターで登ってしまうような緩斜面でパワーを出すのが、あまり得意ではありません。一方で、急勾配すぎると踏み負けてしまうので、丁度釣り合いが取れるのが「710%」という感覚です。

vol.2のコースは、ちょうど私の好きな勾配でした。もっと言うと、六甲山の東西南北4方向のヒルクライムで、裏()が最も好きなコースです。パワーを揃えて走行しているので、コースや勾配の好き嫌いはあまり関係とは思います。

ただ、緩斜面のvol.1ではZwift漕ぎのような「パワーを出すのが目的のペダリング」になってしまった可能性を、完全には否定できません。もしそうであれば、パワーの割にタイムが出なかった辻褄があいます。

実験をしてみての感想・考察

300g重いエアロホイールが、予想外に速い

まずはコレです。正直言って信じがたいです。でも「結果がそうなった」以上、どうしようもありません。

速いと感じたのは25mmだが…

どちらの回ともに、走行中は軽量ホイールの方が速く走れている印象を受けました。ただ、実際のタイム差には繋がっていません。

これは、「速く走っていると感じても、実際に速いかどうかは別の話」なのかもしれません。

例えば、ヒルクライムは細かい加速を繰り返しながら走るので、軽い方が良いはずという理論。私も、そのように考えています。あれも

「エアロホイールは、スピード・ペダリングフィール共に一定に近い。一方軽量ホイールは、失速度合いが大きいから、その分加速度合いも大きい。そして、ホイールが軽いお陰で毎回の加速が軽い (しかも加速幅が大きい)から、乗り手はそれを『速い』と誤認する」

なんて話があるのかもしれません。あくまでも想像ですが。

まとめ 収拾がつかなくなりました

緩斜面のvol.1は軽量が速く、より急勾配のvol.2では300g重いエアロが勝つという、正直訳が分からない結果となってしまいました。

私自身、軽量ホイールより300gも重いホイールが速いタイムを出したことは未だに信じられません。記事を読まれた方は、もっと信じられないと思います。

これでは「ヒルクライムでは〇〇ホイールを使うべし!」というキャッチーな結論は、到底出せません。身も蓋もない事を言えば「どっちを使っても大差は無いので、見た目含めてご自身がお気に召す方を使ってください」となるでしょうか?

時間を捻出して、ホイールの返却迄にvol.3の開催を検討中です。

オマケ

重量は、誰が見ても良し悪しが明らかです。買って秤に乗せれば、謳い文句が本当か嘘かユーザーでも簡単に分かります。

一方、空力は目に見えません。空力性能を示す統一的な基準も、あるのか無いのか分かりません(ちょっと調べた限りでは、無さそう?)

結果、メーカーが自社内で実施した風洞実験の結果をもとに「前モデル比で〇〇w削減」と謳います。ただ、その実験・結果の妥当性がユーザー側で判断するのは容易ではありません。

だからこそ私たちは、目に見える重量を過剰に重視している可能性があるかもしれません。

空力性能を客観的に表示出来る基準がISO等で作られない限り「フレームやホイールを購入する際に、重量を気にしなくなる」なんて事にはならないと思います。軽い方が速い(と考えられている)から、各種プロ使用製品・高価格帯製品ほど軽い訳で。

では、その軽さは速さにどれだけ影響するのでしょうか?非常に気になります。

ということで、調べてみました。

仮タイトル「ヒルクライムにおいて、総重量を300g軽量化したらどれくらい速くなるのか」

vol.3はあるかどうか分かりませんが、こちらは既に実験済みです。記事化を少々お待ちください。


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