ヒルクライム 実験 機材

ホイールが130g軽くなると、ヒルクライムはどれくらい速くなるのか?リム重量編


ヒルクライムレースを頑張りたい勢の私にとって、ホイールの重量は非常に興味のある項目です。

コレを読まれている皆様は私と同じように、各ホイールのカタログ重量・実測重量と使用感が記載されたブログ記事etcを睨みながら「替える?買える?」と悩んだ経験が、おそらく一度や二度ではないと思います。

一般論として、ハイグレードのホイールは高価ですが最も軽量です。セカンドグレードのホイールは、(ハイグレード製品よりは)安価な代わりに、リム・ハブ・スポーク部品や材質の違いにより100g程度重量が嵩む印象です。ホイールの性能は、走りの良さ・タイムに直結する(と言われている)ので、頑張って奮発する人も少なくないのではないでしょうか?

そして、いつもの如くここで疑問が。「頑張って高価な軽いホイールを買ってきたけれど、それってどれくらいヒルクライムのタイムに影響するのだろうか?」

今回は、これを実験してみました。なお、実際にホイールを軽くすることは出来ませんので、一方を重くすることで擬似的に「軽量化」を再現しています。

いつも通り、最初に結論を記載します。

  ホイール重 ホイール軽
Lap1 16:32 / 265w 16:20 / 265w
Lap2 16:37 / 265w 16:25 / 265w

「距離5.1km・平均勾配6.0%」の峠でヒルクライムTTをしたところ、136g軽いホイールの方が、平均12秒速く走った。これを乗鞍のタイムに換算すると、計算上48秒程度の差に繋がると考えられる。

以上の結果となりました。

実験のきっかけ

記事本題に入る前に、言葉の定義を。本記事では便宜上、リムハイトが高い(イメージは50mm程度)ホイールを「エアロホイール」・リムハイトの低い(35mm程度)ホイールを「軽量ホイール」として記述していきます。リムハイトが高くてもエアロとは限らない云々は承知していますが、便宜上このように使い分けます。以下本題。

「ヒルクライムを速く走るなら、ホイールは軽い方がよい。特に、リム重量が効く」

ヒルクライムレースを頑張りたい人、ホイールのアップグレードを検討した事のある人は、一度は目にした事があるだろうフレーズではないかと思います。

一般に、ホイール重量はリムハイトに比例します。リムハイトが高くなるとリムが重くなり、結果総重量は重くなる。その代わり、空力性能に優れたホイールとなります。

リムハイトが低ければその逆です。リム・総重量共に軽いけど空力性能は良くない。

「リムハイトが高くて、ローハイトの物より軽い」こんなホイールが理想ですが、それは難しい訳です。あっても、信じられないほど高価になるのでしょう。

まず、この事実から生まれた疑問が「ヒルクライムでは、重量と空力性能どっちを優先すべきなの?」であり、これを実験したのが、過去3回の「軽量ホイール vs エアロホイール」でした。(記事はこちらより)

この実験結果、読まれた方によって色々な解釈が出来ると思います。個人的には「300g重いエアロホイールは、ヒルクライムでも軽量ホイールと遜色ないタイムを出せる」と解釈しました。僅かに軽量の方が速いのかな?とは思いますが、あれほどまでに拘っていたホイールの重量が、空力性能ほどは価値がない可能性を示唆していると感じました。

「ヒルクライムのタイムは、ホイール・特にリムの軽さが大事というのが今までの通説だけど、ホイールを軽くする事でどれくらい変わるの?」

これを確かめたくなったのが、本実験のきっかけです。

また、「ヒルクライムのタイムは、自転車の総重量を300g軽量化しても殆ど変わらなかった」という旨の記事(こちらより)を公開したところ、「ホイールなら変わるはず」というお声を複数頂きました。私も同じように考えたので、今回実際にやってみた次第です。

ホイールのどこを軽量化するか?

ホイールの重量は、回転体の一番外側に位置するリム重量が特に重要とされています。

例えば、私が今使っているMavicのCOSMIC SLR45。「2022年版は、前年モデル比でリム重量が30g軽量化されている」事をPRしています。私のような捻くれモノは「ここまで書くのに、肝心のリム重量を書かないのはなにか理由があるのだろうか?」などという余計な疑問が浮かんでしまうのですが、どうやらそういう方針のようです。(なお、以下は私の推測ですが、スポークニップルをリムに直接ねじ止めする本製品の構造上、リム重量はさほど軽くないのだと思います。その代わり、リムテープレスを実現しています。私はこちらのメリットを重視し、本製品を使っています。) 

また、スペシャライズドは「Rovalセカンドグレード(CL)のホイールは、トップグレード(CLX)とリムは共通」であることを公式に明言しています(こちら)。「リムは軽い方がよい」とされている現状、ハブ・スポークで重量を調整する仕様は非常に良心的と言えるかもしれません。このような、「リムハイト含めたパッと見の形状は一緒だけど、重量はトップグレードの方が軽い」のは、よく目にします。

ということで、今回はリムに120gの重りを貼り付けたA群と何もつけないB群で、ヒルクライムを2本ずつ走ってタイム差を比較してみました。

重量差を120gにした理由は、各社ホイールのトップグレードとセカンドグレードの総重量差が、大体120g程度だからです。以下、各社製品をざっと調べた結果です。

シマノ

  • デュラ c36  1,350 アルテc36  1,488 (+138)
  • デュラ c50  1,461 アルテ c50  1,570 (+109)

roval

  • アルピニストclx 1,250 アルピニストcl   1,360 (リム共通・+110)
  • ラピーデ clx        1,505 ラピーデ cl          1,590 (リム共通・+85)

mavic

  • コスミック slr32 1,390 コスミック sl32  1,499 (+109)
  • コスミックslr45 1,440 コスミックsl45   1,575 (+135)

つまり、A群のリムだけを120g重量化すれば、各ホイールのトップグレードとセカンドグレードで発生するタイム差を擬似的に数値化出来るのではないか?と考えました。なお、各社の重量差はあくまで「総重量差」であり、今回のように「リムだけ」120g重い訳ではないはずです(全部調べたわけではありませんが)。

ただ「ホイール、特にリムは軽い方がよい」という理屈に則れば、ハブやスポークの120g増よりリムの120g増の方が、タイムに与える影響は大きいと思われます。従って、逆に言えばトップグレードとセカンドグレードのタイム差は、この実験結果以下に収まる可能性があります。(無論それは可能性の話で、やってみなければ分かりませんが)

以上の理由から、今回はリムにウェイトを付与しました。ハブに重りを貼り付けてvol.2をやってみたら、また違う結果になるかもしれません。(またひとつ実験ネタが生まれた瞬間)

各種実験条件

比較対象

  • A群:Mavic CosmicSLR 45 +120gの重りをリムに貼り付け (養生テープと合わせて、最終的に136gの増量でした)
  • B群:Mavic CosmicSLR 45のまま走行

A群は、写真のように5gの重りを左右均等に6個ずつ貼り付けました。カンタンに剥がせるよう、養生テープを貼った上から重りを貼っています。重量を実測した結果は、以下の通りです。

20gの重り(上振れ?あり)

前輪before

前輪after

後輪before

後輪after

実験に使った機材

  • フレーム:Bianchi Specialissima Disc(2021)
  • メインコンポ:Shimano Ultegra 12s
  • ホイール:Mavic CosmicSLR 45
  • タイヤ:Michelin Power Cup CL 25c
  • チューブ:Vittoria Latex

実験コース

蓬莱峡(登坂距離5.10km、平均勾配6.0%)で実施。Stravaのセグメントとしては山頂の交差点がゴールですが、今回はそこから約300m手前にある信号をゴールとしています。

実験に際しての、その他条件

基本的な条件は、過去の実験と同様です。

  • 各重量で2本ずつ、すべてLap平均パワーが265w(約4.4w/kg)になるよう登坂する。
  • 空気抵抗が同じになるよう、全行程をブラケットポジションのシッティングで登坂する。上ハンやダンシングはしない。
  • 各回の風向き・気温上昇に伴う気圧変化etcは、私にコントロール出来ない事なので考慮しない。
  • パワーメーターは、「Assioma Duo」を使用する。1本目の走行前に、メーカー指定の方法(スマホアプリ)でゼロ校正を行う。
  • 各回のスタート前に、毎回同一量の水をボトルに入れて重量を揃える。→タイムにほとんど影響しないことが分かったため、本条件は除外する。
  • 走行順は、実験の都合上「リム重→リム軽」の順とした。

結果

  ホイール重 ホイール軽
Lap1 16:32 / 265w 16:20 / 265w
Lap2 16:37 / 265w 16:25 / 265w

軽いホイールの方が速いのは、間違いなさそうです。

考察

ホイール(リム)が軽くなると、明確にタイム差となって現れました。

同時に、走行フィーリングが非常に良くなったと感じました。端的にいうと、入力に対してよく進む感覚があります。そして、カーブでのハンドリングがクイックになった印象です。総じて、ホイールの重量(リム重量)は、自転車の運動性能に大きく影響を与えると感じました。

もし、トップグレードのホイールとセカンドグレードのそれがこの差であれば、個人的には「結構違う」と感じました。

ハイエンドホイールとセカンドグレードでは、10〜15万円程度の金額差があるのが一般的です。

予算の限度がある場合、私ならホイールに出来るだけ予算を回すと思います。改めて、コンポのグレードを下げてでも、ホイールはなるべく軽いホイールを使いたいと思いました。

じゃあ、予算が許す限り軽いホイールを買えば良いの?

現時点では、そうとは言い切れません。その理由は、現状ホイールの重量構成とタイム差の関係が明確になっていないからです。しつこいようですが、300gも軽量化したにも関わらず、場所によっては殆ど意味がない可能性があるからです。

冒頭に記載した通り「ヒルクライムではホイールの軽量化、特にリムの軽量化が効く」と言われています。

今回は上記通説に則り、最もタイム差が生まれるであろうリムに重りを貼りました。

しかし一般に、トップグレードのホイールとセカンドグレードの重量差は、リム重量の差だけではないと考えられます。例えば先の例に出したスペシャライズドのrovalシリーズは、リムはトップ(CLX)とセカンド(CL)で同じと公式に明言しています。

という事で、次回はハブに重りを貼って実験する予定です。

この結果次第で、ホイールが軽いという理由でハイエンドが良いのか、それとも別の選択肢がベターとなり得るのかが見えてくると思います。

従って、今の時点では一概に「軽いホイールを買うべきです」とは書けません。その結論は、次回以降に保留です。次回でズバッと結論が出るかは分かりませんが、何らかの方向性だけでも出るといいなと思います。このシリーズ、やらせは一切無しなので、そんなに都合よくいかないかも知れませんが。

まとめ

リムが130g重くなるとタイム・走行感共に変化を感じることが出来ました。そして、一般に言うリムの軽さの重要性を肌で実感することができました。手間は掛かりましたが、やってみて良かったと思います。ハブ増量編が、今から楽しみです。


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