先日、IRCの Formula Pro Tubelrss Ready S-Lightを購入しました。
80km程使用してみましたので、ファーストインプレッションを記載したいと思います。
私の中では、ファーストインプレッションと言いつつ、原則として日を改めて最低3回程度は使ってから書くことにしています。ただ今回は、1回使った感想を書くことにしました(理由は後述)。
なお、先に結論から書くと
- 路面が管理された、クリテリウムなどのレースにオススメ。
- 個人的には、トレッドパターンによるであろう走行感は好み。
- GP5000TLと比べてこちらを積極的に使う理由があるか?といわれると、正直答えにくい。
以上が、率直な感想です。
なお、こちらも後述しますが、本製品はRovalへの取り付けは適合外です。依って、ビードが上がらないetc「タイヤとホイールの相性に起因する問題」は、全て発生して当然のものと考えられます。
購入の経緯
「今年のヒルクライムレース用タイヤ」として購入したタイヤを「Rovalとの適合が怪しいかもしれない」という理由で手放してしまいました。その為、次なる「ヒルクライムレース用タイヤ」を探していました。
こちらでも記載しましたが、TLRは、普段使いにするには管理がやや面倒です。ただ、レース用途であれば、管理の煩雑さと引き換えにタイムが短縮できるのであれば悪くないかも?とも思いました。(富士ヒルで17秒短縮出来るのであれば、取り付けや管理の手間など問題ではありません!)
2022年は、タイヤ豊作の年。各社から新作がリリースされています。いろいろなメーカーHPを見ていく中で、久しぶりに日本製のタイヤを使ってみようと思いました。そして、タイミング良くワイズロードオンラインでセールになっていました。
なお、上述したMichelinと同じ轍は踏むまいと、商品紹介ページに”ワイドリム対応”文言がある事を確認してから購入しております。
これでRovalとの適合もバッチリです。
となる予定だったのですが、残念ながらそう話はうまく進みませんでした。というのも、本製品は、「ワイドリム対応」には対応していますが、Rovalには対応していません。
取り付けについて
重量
2本購入し、222.5gと220.5gでした。カタログ値は215gなので、「当たり」ではありませんが、まあこんなモンでしょうか。
ホイールへの取り付け
IRC製品らしく硬めです。後輪は、タイヤレバー必須でした。前輪は、取り付けが下手な筆者でも、後輪と比較したら余裕があるように感じました。ただ、ここを頑張る気は無いので、こちらも最後はタイヤレバーを使いました。
取り付け難易度としては、コンチネンタルのGP5000TLを10としたら「前輪7・後輪8.5」という印象です。
ビード上げ
前後輪どちらも自宅のフロアポンプでは上がりませんでした。
後輪は、ガソリンスタンドの空気入れを使い、一発成功。前輪は、全周に養生テープを貼ってもバルブコア周りのエア漏れが酷く、失敗。
後日、バルブの固定ナットを別のモノに交換し、成功しました。
写真を撮り忘れて申し訳ないのですが、交換したバルブ固定ナットは、中にゴムのOリングが入っています。コイツが良い仕事をしたように思います。
なお、新品のタイヤは取り付け後、ぬるま湯を含んだタオルでワックスを拭き取るようにしています。ただ、本製品はトレッド面にパターン加工がある関係か、ワックスのベタベタ感は殆ど感じませんでした。
※ガソリンスタンドの空気入れは、本来自動車や二輪車用のタイヤに空気を入れる道具です。自転車用タイヤに使用可能なのかは、本ブログでは言及しかねます。
ホイールやタイヤ破損etcのトラブルが発生しても、筆者は一切の責任を負いかねます。また、
- 給油や洗車のついでにお借りするか、利用後に自販機で缶コーヒーの1本でも買う
- 日中の混雑する時間帯には行かない
- 空気入れの無断使用や長時間の占有は厳禁
等、店と他の利用客への配慮を忘れないようお願いします。
本ブログのスタンスとして「ガソリンスタンドの空気入れを借りればOK」という事では在りません。原則、自転車のプロショップに作業を依頼する事をご検討ください。
走行感について
コンチネンタルのGP5000 TLと比較した印象を書いております。
平坦路
加速・巡行共にGP5000と比較して、特段に良いとも悪いとも感じませんでした。たぶん、どちらを使っても不満はないレベルだと思います。
ただ、普段走行する河川敷のコンクリート舗装路面(アスファルトよりは多少荒れている)では、GP5000の方が、跳ねずに前に転がっていく印象です。
ヒルクライム
大阪北部の五月山(急勾配)と、勝尾寺(緩斜面)でテストしました。このタイヤで、より感触が良いと感じたのは五月山(急勾配)です。
筆者のコンディションが悪かったのでタイムがどうこうは言えませんが、走行感は非常に良かったです。エモンダで、クルクル登っていくスタイルと合っているのかもしれません。
一方、勝尾寺では、五月山で感じたような好印象はありませんでした。
ただ、「勝尾寺ではダメ」というより「勝尾寺では普通。五月山ではgood」というイメージです。
コーナリング
個人的にこのタイヤで最も好印象だったのは、峠のコーナリングです。本タイヤは、ロードバイクのタイヤには珍しく?トレッド面が複雑にパターン成形されています。
コレが効いているのか、自転車を倒していったとき、ある角度からロードノイズや手に伝わってくる感触が変わります。このお陰で、タイヤの「この辺り」が使われているのだろうなぁというのが、直感的に分かります。
ただ、好みは分かれるとは思います。「そんな機能むしろ無い方が良い」という人の言い分も、よく分かります。
耐パンク性
残念ながら低いと思われます。
婚約後、駆け込みでエモンダを購入したのが約4年前。それ以降、実走の恐らく90%以上をGP5000のCL/TLで走行しています。残り10%はVittoriaのCorsa SpeedとGoodyearの4season、Michelin power cupです。
これらのタイヤで、約4年間出先では一度もパンクした記憶がありません。
それが、本タイヤに交換後2時間半・距離にして40km弱でパンクしました。以前と、走り方やコースは特に変えていません。
言うまでもありませんが「パンクは時の運」です。それは理解しています。
ただ、私も人間です。この状況では、ネガティブな印象は避けられません。
なお、パンクしたのは後輪です。
当日、約1時間毎にタイヤのエア漏れ具合を確認しながら走行していました。ホイールに適合しないタイヤを取り付けて、どの程度エア漏れが発生するのかを確認したかった為です。
実際、前輪は徐々に空気が漏れていました。参考までに、朝出発時で5.2barだったのが、4時間後の帰宅時で3.8barにまで落ちていました。(後輪は、途中でパンクしたので計測出来ず)
一方後輪は、2時間経過次点でも「手で押した感じ」では、殆ど漏れていないようでした。前述の通り、取り付けがキツくビードも割とラクに上がったので、その辺りがエア漏れに関してはポジティブに影響したかもしれません。
ただ、先にパンクしたのは、エア漏れを起こしていない後輪でした。
トレッド面のパターンの隙間に、3mm程度の異物が刺さった(現物は確認出来ず)のか、穴が空いてしまいました。残念ながらシーラントでも塞がらなかった為、その場でCL運用に切り替えました。
なお、パンク修理の際、リムからの脱着は問題なく出来ました。
耐久性
80kmしか使っていませんので、評価出来ません。スペシャリッシマに取り付けてあるタイヤの寿命が来たら、次は本タイヤをCL運用にして履きつぶす予定ですが、一体いつになるか分かりません。
この項目に関しては「評価なし」です。
価格
定価は9,240円です。GP5000TL(R)との価格差は、約3,000円(前後で6,000円)です。
私は、ワイズロードオンラインのセールで購入したので、1本6,300円でした。安価に購入出来ましたが、それでも「モト」は取れていません。
メーカーの製品紹介ページには少々疑問あり
メーカー公式サイトの商品紹介ページは、正直疑問があります。
当該タイヤの商品紹介ページを確認すると
“2019年に見直しがされたチューブレスリムの企画に準じた、ワイドリムへの装着にも対応している”。と記載があります。
購入する前にこの記述を確認したので、私はRovalホイールへ適合していると判断しました。
ところが、後日何の気なしにシクロワイヤードの当該商品紹介記事を読んだところ
“25Cと28Cタイヤは主流になりつつある15mm、17mm、19mmの3種類のリム幅に対応する”の文字が…。
コレ、「ワイドリム」対応だけどRoval(内幅21mm)には対応して無いじゃん。
ここで疑問なのですが、このような情報を、メーカーHPには記載せずメディアの記事にだけ載せたのは、なにか理由があったのでしょうか?タイヤを購入する際は、メーカー公式ページだけで無く、大手メディアの商品紹介ページもくまなく読む必要があるのでしょうか?
それとも、ホイールのリム内幅とタイヤの適合なんてモノは、一部のオタク以外拘る必要が無い話なのでしょうか?
確かに、私がベンチマークとしているGP5000シリーズも、(おそらく)21mm幅のホイールには適合していません。よって、そこまで気にする必要のない事項かもしれません。
これが、本製品の発売後に「内幅21mmホイール」が上市されたのであれば、このような事態が発生するのは理解出来ます。ただ、本製品が発表された時点で、既に市場にはRovalが存在していました。 (Rovalは2017年、本製品は2020年)
また、本製品がリリースになった時点で「Venge × Roval」は既に実業団レースで鉄板の組み合わせと言っても過言ではないほど、市民権を得た組み合わせになっていました。Rovalのホイールが「一部マニアのキワモノ」であればまだ理解できるのですが。
これは、製品そのものの良し悪しとは直接関係ありませんが、個人的に気になる出来事だったので記載しました。
今や、Shimanoの新型ホイールさえ内幅は21mmです。今後この幅のホイールが普及していくであろう状況で、漠然と「ワイドリム」という単語でタイヤの適合を括るのは、もう無理があると思います。
どういった人にオススメ?
個人的には、「クリテリウム用」という認識です。
走行感全体でいうと、GP5000TLと比較しても特別どうこうという印象はありません。価格差や日本国内産という入手性を鑑みれば、競合出来る製品だと思います。ただ、個人的には「オススメですよ」とは書きにくいのが、正直な感想です。
今後、寿命で在ろう3,000km?まで1回もパンクしないのかもしれませんが、初日の皮むき走行でのパンクは、印象が良くありません。
なお、耐パンク性能を「レース用だから」と割り切るにしても、そもそも私はヒルクライムレースを年間3本程度しか出ません(家庭・予算の都合で出れません)
年にレースを何戦も走る人であれば、パンクも「今回は運が悪かったナァ」で終わりかもしれません。ただ、個人的には年間3レースの1本をパンクで終わるのは避けたいところです。
では、どのような場面ならこのタイヤを使うか?と考えたとき「都市部のクリテリウムやサーキットエンデューロのような、クローズドで路面が管理されたコース」であれば、タイヤの良い部分が活きる思います。幸か不幸か、日本のロードレースは海外のそれとは違い、クローズドの周回コースが殆どです。
路面の清掃が行き届いていればパンクのリスクは大幅に下がり、タイヤのポテンシャルを十分に発揮出来ると思います。
逆に「軽量モデル」という事もありヒルクライムレースに使いたくなりますが、個人的にはヒルクライムレースでの使用はお勧め出来ません。
ヒルクライムレースの路面は、往々にして荒れている箇所が少なくないからです。これは、ヒルクライムレース開催地の特性に関係していると考えています。
具体的にいうと、ヒルクライムレースの多くは、交通量の少ない地方の公道・冬期は積雪で通行出来なくなる道路で行われます。
これらの「交通量が少ない・雪が積もる」路面は往々にして痛みやすく、補修も後回しにされがちです。予算が限られる以上、交通量の多い路面を優先的に補修するのは、自治体として当然の判断です。また、補修しても積雪(というより雪解け)で、毎年アスファルトが痛んでしまいます。
有料道路は、通行料から修繕費を捻出出来るのかもしれませんが、公道は、相当な穴でも空かない限り、多少のひび割れは放置されている印象です。
このような事情から、個人的にはヒルクライムレースでパンクリスクの高いタイヤを使うのは、あまりオススメ出来ません。
まとめ
耐パンク性能を考えると、ヒルクライムレースに使うのは難しいなというのが、率直な印象です。レースは、完走してナンボです。
一方で、トレッド面の感触etcポジティブな部分もありました。似たようなトレッド面の、Aspiteシリーズの走行感は気になるところです。
本投稿が、読まれた方の何かしらのご参考になれば幸いです。