ヒルクライム 実験

この10年で、ロードバイクはどれくらい速くなったのか?ヒルクライム編


一部方面から?ご好評を頂いております「ヒルクライムではどちらが速いのか」シリーズ。今回のテーマは「ロードバイクは、この10年でどれくらい速くなったのか」です。

キッカケは昨年秋頃(だったと思います)、とある方のSNS投稿が目に留まりました。内容は、以下の通りです。

”投稿主Aさんが、数年ぶりに自転車を再開しようと思い自転車屋に行った。そこで「10年前のロードバイクは持っているけど、最新の100万円クラスのロードバイクに乗り換えたら速くなりますか?」とスタッフに質問をした。

返答は「速くはなっても、少しですよ」との事だった。

投稿主さんは、ショップの正直?誠実?な返答に好印象を抱き、自転車を買うならそこで買いたいなと思った。”

細かなニュアンスは違ったかもしれませんが、おおよそこのような内容だったと記憶しています。

上記投稿をみて、私はいつもの如く素朴な疑問が思い浮かびました。

確かに、幾ら最新のロードバイクに買い換えたところで少ししか速くならないよな。私も1年前に当時最新のロードバイクに買い換えたけど、買い換えて速くなった感覚は殆ど無い。けど、その店員さんが言った『少ししか速くならないですよ』の『少し』って、実際どれくらいなのだろうか?

と。

ということで、調べてみました。

いつもの如く、先に結論を書きます。

  2008年 システムシックス 2021年式 スペシャリッシマ
Lap1 16:21 / 265w 17:06 / 265w
Lap2 16:28 / 265w 16:54 / 265w

平均勾配6.0%、登坂距離5.1kmのヒルクライムでは、2008年式のシステムシックスが登坂1本平均「35秒」速いタイムを出しました。ただし、2021年式スペシャリッシマの本日のタイムは、過去の「同バイク・同ホイール・同コース・同パワー」のタイムと比較して、明らかに遅過ぎます。読まれている方には本当に申し訳なく思いますが、風向き・パワーメーターのゼロ校正etc、何かしら問題があった可能性を強く疑います。(パワーソースは、どちらもアシオマである事を確認ができました)。

日が異なるため参考値にはなりますが、スペシャリッシマの名誉のためにの過去同ホイール・同コース・同パワーのタイムを列挙します。

  2008年式 システムシックス(今回) スペシャリッシマ 過去Aログ スペシャリッシマ 過去Bログ 参考 Emonda 過去Aログ
Lap1 16:21 / 265w 16:20 / 265w 16:29 / 265w 16:39 / 255w
Lap2 16:28 / 265w 16:25 / 265w 16:35 / 265w 16:37 / 255w

上記、パワーソースはすべてAssioma Duoです。2008年式システムシックスの本日のタイムは、他バイクと比較しても何ら遜色ないタイムを出している事が分かります。

と言う事で、いつものようにスパッと結論を書けなくて残念ではありますが「2008年式のバイクは、2023年においてもヒルクライム一発なら何ら見劣りしない」と言って良いのではないか?と思います。

実験のきっかけ

冒頭に紹介したSNS投稿にあったとおり、この10年でのロードバイクの進歩を知りたくなったからです。以下に、私が自転車を始めた2008年から2022年までに変わった点を、思いつくまま記載します。

  • フレーム剛性:「前モデルと比較して剛性アップ=良い」とは言い切れなくなった。ここ数年、剛性アップを新モデルの最優先PR事項とするメーカーは減った印象。
  • フレーム重量:基本的には、新しいモデルほど軽い。ただし近年は、重量より空力性能向上に各社シフトしつつある。
  • 空力性能:10年前は、空力?何ソレ美味しいの?状態。しかし、シフト・ブレーキケーブルのフレーム内装化に始まり、今やフル内装が標準に。
  • ブレーキ:2022年現在、新車はディスクブレーキにほぼ完全に移行した。
  • ホイール:リムのワイド化にも関わらず、重量は10年前と遜色なし若しくは軽量に。
  • タイヤ:「レース=TU」の図式は徐々に崩れてきた印象。スポンサー(メーカー)の都合と、CL/TLの性能アップ・フレームのディスク化により設計の幅が広がった結果と考えられる。

ざーっと記載しましたので、抜け漏れはあるかもしれません。他にも「BBの独自規格乱発→ねじ切りへの回帰」etc、速さに直結はしないであろう仕様変更もありました。

また、今後はここに「各フレーム専用のステム一体型ハンドル」も入ってくるかもしれません。これらは、ポジションの調整幅が減る代わりに、空力性能と重量面においてメリットがあります(と言われています)。我々一般人にとってどっちが良いのか個人的には若干(かなり)疑問ですが、本記事はその話をする記事ではありませんので割愛。

定着するか否かは、今後の売れ行き次第でしょうか。個人的には、正直やめてほしいです。こちらでも記載していますが、アマチュアは汎用部品で構成された自転車の方が、便利だと思います。

これらの変化をみて、改めて疑問に思います。

「自転車本体から周辺部品まで様々な仕様が様変わりして、もはや10年前の部品は今のバイクに殆ど使い回せない。けど、結局10年前と比較してどれくらい速くなったの?」

2022年の2月、 (当時そんな予定は全くありませんでしたが)私もロードバイクを買い換えました。一方、自転車を始めた2008年に購入したフレームが、未だZwift専用機として絶賛稼働中です。

つまり、我が家には2021年式ディスクブレーキのロードバイクと、2008年式リムブレーキのロードバイクがあります。

幸か不幸か?自宅には上記疑問を解決するための設備が整っています。これは「やれ」という事なのでしょう。

実験機材詳細

(準)最新バイク

  • フレーム:Bianchi Specialissima Disc
  • メインコンポ:Shimano Ultegra12s
  • ホイール:Mavic CosmicSLR45 Disc
  • タイヤ:Continental GP5000 TLR 25c

10年落ちバイク

  • フレーム:Cannondale Systemsix 2008
  • メインコンポ:Shimano Ultegra11s (6800系メイン)
  • ホイール:Roval CLX50
  • タイヤ:Continental GP5000 CL 25c

なお、10年前には存在しない部品(ホイール・タイヤ・11sコンポ)が一部含まれます。

  • 当時のホイールを、もう持っていない
  • 古すぎるタイヤを使うと、安全上のリスクがある
  • 10sと11sという、ギア枚数の違いでタイム差が生まれるとは考えにくい

「ガチの実験(富士ヒルでどっちを使うべきかシリーズ)」であればタイヤも統一した上で実施しますが、今回の実験はあくまでも「読み物」です。あくまで「この10年で様変わりしたロードバイクの、新旧対決」という事をお含み置き頂ければと思います。

実験コース

蓬莱峡ヒルクライム(距離5.1km、平均勾配6.0%)で実施しました。Strava上では、もう数100m長いセグメントになっています。しかし、本実験では「信号ガチャ」によるタイム差を排除するため、約300m手前にある信号をゴール地点としています。

実験に際しての、その他条件

  • Lap平均パワーが265w・約4.4w/kgになるよう、2本ずつ登坂する。
  • 空気抵抗をなるべく揃える為、全行程をブラケットポジションのシッティングで登坂する
  • 筆者がコントロール出来ない「各回の風向き・気温上昇に伴う気圧変化etc」は、考慮しない。
  • パワーソースは、Assioma Duoを使い回す。各バイクに取り付け後、走行前にスマホアプリで都度ゼロ校正をする。
  • 各Lapのスタート前に、同一量の水をボトルに入れて各回の車体重量を揃える。→タイムにほとんど影響しないことが分かったため、除外する。走行順の都合上、2008年式バイクの方が100g程度ボトルは軽くなったと思われる。
  • タイヤとチューブについて。2008年式バイクは、Continental GP5000 CL (25c)とマキシスの軽量ブチルチューブを使用。2021年式バイク、Continental GP5000 TLR (25c)。いずれも約500km~1,500程度走行済み。2008年式バイクのタイヤの方が、やや走行距離は多いはずです。

実験結果

  2008年式 システムシックス(今回) スペシャリッシマ 過去Arログ スペシャリッシマ 過去Brログ 参考 Emonda 過去Aログ
Lap1 16:21 / 265w 16:20 / 265w 16:29 / 265w 16:39 / 255w
Lap2 16:28 / 265w 16:25 / 265w 16:35 / 265w 16:37 / 255w

予想に反して、2008年式のシステムシックスが健闘しました。

考察

まず、2008年式のロードバイクが非常に健闘したと思います。今後「リムブレーキから乗り換える」という視点で見たとき、投資対効果はどうでしょうか。何でもかんでも二言目に「コスパ」と言うのは考え方として些かさみしい気もしますが、この実験系記事に於いては「コスパ」に重きを置いています。

と言う事で、コスパも踏まえつつロードレースを頑張りたい人。

身も蓋もありませんが、この人たちは予算が許す限り最新のバイクが良いとは思います。一見「それ意味あるの?」というようなモノ・変化にも、(多少なりとも)意味があるはずです。その積み重ねが、タイムや順位となって現れる以上「リザルトの為に、何にどれだけ投資するか」が判断基準になろうかと思います。また、ブレーキング性能から見ても、カーボンリムのリムブレーキではプロトン内で走りにくい様な気がします。

ただ、乗り換えるにしても、単に最新のバイクというだけでは乗り換える意味は薄いかもしれません。最新ロードバイクならではの空力性能や、いわゆるピュアレーシングバイクである必要があろうと思います。私は、これらバイクに殆ど乗った事ないんで想像の域は出ませんが…スペシャリッシマも、脚あたりが良いので長距離レースの最後に足を残すという用途ならアリじゃないでしょうか。

本日2台を乗り比べて改めて実感しましたが、スペシャリッシマは非常に乗り味が上質です。システムシックスは、物凄く刺々しく荒々しい。振動も来ます。

 

逆にヒルクライムレースしか出ない人。もしくは「自転車・サイクリングを楽しむ」のが目的の人。

この人たちは、ヘッド・RDハンガー等の専用部品さえ予備を持っておけば、10年前の車体と部品で十分という考え方も多いにアリだと思います。

「ペダルを漕いで走る。ブレーキを掛けて止まる」ここは、2008年から特に変わっていません。最新バイクの方が「より○○」というだけです。「最新のロードバイクじゃないと出来ない事」なんていうものは殆どなく、10年前のバイクでも出来ることは一緒です。

ヒルクライム1本勝負なら、残念ながら殆ど差は無いのかな?と。ヒルクライムに於いて、ブレーキがディスクだから速いなんて事はまずあり得ないでしょうから。

もちろん、ご自身が「乗り換えたい」と思った車体があるのであれば、それは乗り替え時だと思います。ただ、周りの知人が乗り換えたからなんとなくetc明確な目的が無いのであれば、投資に見合った満足度は得られないかもしれません。

まとめ

繰り返しにはなりますが、同一日のデータで綺麗な比較が出来なくて、残念に思います。

一方、2008年式のバイクでも「速く走る」と言う目的は十分に達成できると感じました。確かに、乗り換えないという判断も「コンポその他スモールパーツの供給が途絶えなければ」という条件付きにはなってきます。個人的には、今後はココがボトルネックとなり買い換えを迫られそうな気がします。

ただ、そうであればその時に乗換えを検討すれば十分では?と思いました。

「準最新バイクに乗っているおまえが言うな」なのか「準最新バイクに乗ってる人が言うからこそ」なのかの判断はお任せしますが、ロードバイクの買い換えを考えている方の参考になれば幸いです。


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