先日、兵庫県知事選挙が終わりました。既に結果はご承知の通りだと思いますが、前知事が再選を果たしました。
今回の選挙、兵庫県民の筆者は当事者です。非常に興味深く見ていました。そして、個人的には学びのある選挙だったと思います。
本ブログは政治ブログではありませんし、筆者は政治に精通している訳でもありません。従って、細かな政策の是非や法的な判断は出来ません。
本記事では、この選挙から個人的に感じたことや学びについてスポットライトを当てて、記事に纏めたいと思います。
「まとめ」の項まで記載してからこの導入部を作成していますが、今回も先日のタバコでオリンピック辞退は厳しすぎるか否か同様、結論という結論はありません。
思考の整理や、こんな考えもあるのか程度にお読みいただければ幸いです。
選挙に至るまでの経緯概要
どのような経緯を経てこの選挙が行われたのかを、大雑把におさらいします。後述しますが、筆者は最初から関心を持ってオンタイムで経緯を追っていた訳ではありません。強く関心を持ったのは、8月頃からです。時系列や内容の齟齬があればご指摘ください。
- 3月:兵庫県知事の「7つの疑惑に関する文書(パワハラ・物品受け取りetc)」が、匿名で報道機関や警察に送付される。知事は、事実無根と批判。文書作成者の調査を開始。
- 4月:県の公益通報制度を使い、同内容にて内部通報が実施される。
- 5月:県は、文書作成者を特定し処分。
- 6月:兵庫県議会は、真相解明を目的に百条委員会を設置。
- 7月:証人として出席予定だった文書作成者が、百条委員会直前に死亡される。
- 8月:全国ネットで連日パワハラ疑惑・物品受け取り疑惑に関する報道が過熱。物品受け取り(おねだり)については、神鍋高原公式サイトがそのような事実は無かったと否定。
- 9月:兵庫県議会86人は、「県政の停滞を招いた」という理由から、全会一致で前知事の不信任案を可決。月末をもって知事は失職した。
- 10月:知事選告示。前知事が立候補。
- 11月:前知事が再選
全てを網羅している訳では無いと思いますが、大まかにこのような経緯と認識しております。
選挙に難しさを感じた理由
何が事実なのか、殆ど解明されていなかったからです。投票の判断材料として
- この3年の県政への評価
- 3月の文書への対応が適切だったのかについて、
- パワハラや不当な贈答品の授与はあったのか
県政への評価は有権者各自がするとして、下2つの問題について、いずれも結論は出ていません(と認識しております)。
3月の文書への対応について
文書の取り扱い及び対応の善し悪しについては、個人的には判断がつきませんでした。
3月に出た文書が内部通報に該当するのであれば、通報者を特定し処分した県・知事の対応は、知事の失職に相当する誤った対応と考えます。一方、知事が記者会見で説明したとおり「誹謗中傷性の高い文書」であれば、公務時間中にその様な文書を作成した人物の処分は、妥当に思います。
大手・ネット含めた各種メディアを見ても
- 公益通報制度を踏みにじった。県及び知事の対応は言語道断
- あれは単なる怪文書、公益通報には該当しない
どちらの意見も多数あり、どちらが正しいのか筆者には判断がつきませんでした。
- 3月に最初の文書がメディア・警察各所に流布され、後から体裁を整えて再度公益通報制度のレールに乗せたとしても、それは内部通報とは言えないのでは?
- 3月の文書への対応は、県及び知事の独断なのか?(顧問弁護士etcに公益通報に該当するかの確認をしていないのか?)
- 3月時点の文書が公益通報に該当するのかは、司法判断を仰ぐべきなのでは?
個人的には、ここが明らかになって欲しいなと感じていました。
パワハラ・物品の不当な受け取りについて
百条委員会中に知事の不信任決議案が可決されて失職したため、元知事の疑惑は現在も調査中です。知事の失職に伴い中断しているだけであり、今回再選を果たしたからといって名産品の不当な受け取りやおねだり疑惑、パワハラの疑惑が完全に晴れたわけではありません。
一方で、少なくとも失職した時点では、先の疑惑は認定されていません。従って、疑わしきは罰せず・悪魔の証明といった原則に則れば、知事が失職する理由は無いと考えました。
以上より
「文書への対応が適切だったのかは、不明。パワハラの有無は調査中につき不明。名産品の受け取りやおねだりは(少なくとも一つは)一部の議員がでっち上げたデマ」
分かっているのは、ここまでです。前知事に投票するか判断するには、材料が乏しすぎます。
従って投票先は、「前知事以上に県政を進めることが出来る(出来そうな)候補者が出てくれば、その人。そうで無ければ、前知事。」
以上のように判断しました。
今回の選挙からの学び
ここからは、今回個人的に学びになった事を記していきます。
大手メディアの報道は、影響力がある
「なぜ東京のキー局がいくつも、兵庫県の(あの程度の)問題で連日大騒ぎしているのか」
これが、筆者がこの問題に関心を持ったきっかけです。時期としては、全国ネットで知事バッシングが始まった7月頃からだと記憶しています。兵庫県在住ながら、「県知事という立場にありながら、随分セコい人だな?そんな人だったかな?」と大手メディアの報道よりこの問題を認識しました。お恥ずかしながら、県政への関心はその程度でした。
ところが、百条委員会の内容が全国ネットで連日報じられます。現地視察の際目的地の20m手前で下ろされて激高した、名産品の蟹を職員の分まで貰った、高級なスキーウェアを欲しがったetc。出演するコメンテーターや評論家のコメントも、知事を厳しく批判する内容が殆どでした。
大手メディアが報じる内容が事実であれば、確かに県知事にふさわしい人物とは言えない気がします。パワハラは容認される時代ではありませんし、自治体の長が民間から物品を受け取る行為も、場合によっては大きな問題になり得ます。
一方で、指摘されている内容は県の予算を横領していたetcの重大な犯罪行為とまでは言えません。言い方は良くないかもしれませんが、「県知事なのに随分セコいな」という域を出ません。
また、兵庫県がここまで全国ネットで取り上げられる事への違和感もありました。日本の中心は、東京都です。連日バッシングしている局も、東京のキー局です。
そして、人口や産業の規模でいえば、東京の次点は大阪府。その次がどこなのかは様々な意見があると思いますが、兵庫県と大阪府では大きな差があるように思います。よって、東京から見たとき大阪と兵庫では注目度に大きな差がある筈と感じます。
にも関わらず、連日全国ネットで兵庫県の問題が取り上げられています。億単位の横領や刑事事件なら理解できますが、そうではありません。ここに、もの凄い違和感を抱きました。
ネット上ではその前から騒がれていたのかもしれませんが、筆者がこの問題について能動的に情報を取り始めたのは、テレビでの猛バッシングが始まってからです。その意味で、大手メディア・テレビの影響力は、令和6年に於いても大きな力があると感じました。
情報の見極めに発生するコストが膨大すぎる
今更ではありますが、今回の選挙ではコレを感じました。
各自が目にする全ての情報は、発信者の質と内容の正誤で(些か強引ではありますが、)下記4つに分類する事が出来ます。
- 1:発信者の質 高 発信内容 正 (最も有益なゾーン。一部のメディアや著名人の見解もココ)
- 2:発信者の質 低 発信内容 正 (ネット特有のゾーン。分かり易い発信力は無いが、内容に納得感のある情報たち)
- 3:発信者の質 低 発信内容 誤 (ネットに多いゾーン。デマや誹謗中傷もここに含む)
- 4:発信者の質 高 発信内容 誤 (最も警戒すべきゾーン。一部のメディアや著名人の見解もココ)
テレビや新聞を筆頭とする大手メディアは、発信する情報に会社や組織のフィルターが掛かります。
これは、良くも悪くもです。よって、3の情報が出てくることは少ないとされています(個人的にはだいぶ怪しいと思っていますが)。その代わり、大手メディアの情報には、4が隠れている場合があります。情報発信を生業とするメディアは、会社や組織の判断によって意図的に情報を切り取る事があります。そして、その編集済みの情報があたかも事実かのように発信するスキルに長けています。その技術は、一般人の比ではありません。
ネットの場合、誰もが意見を述べ・情報を発信することが出来ます。そこに、第3者のチェックは掛かりません。
よって、まず3の情報(発信者の質・発信内容いずれも低い)が非常に目につきます。SNS特にX(Twitter)に顕著ですが、吟味に値しない誹謗中傷や少し考えれば分かるようなデマも含めた情報で溢れかえっています。そして、そのような情報は良質(と思われる)な情報と同列・同レベルで流れてきます。
良貨も十分に目立つので、「悪貨が良貨を駆逐する」末路を辿るとは思いませんが、気をつけるべきだと感じました。特に特定のSNSは、自分の見たい情報が優先的に流れてくる仕組みになっているため、注意が必要に思います。
そして、テレビとネットどちらの情報も、誤っている(と思われる)情報の吟味に、非常にコストが掛かりました。単純に時間を要しますし、体力も消耗します。分からない事があれば、それを調べる所から始める必要もあります。
本件に関して、自分の理解を深めるためにそこまでのコストを費やしたくないという人の考えも理解出来ます。ただ、それをすると、特定の陣営に有利な状況が生まれると判断し、私はコストを投じてでも理解を深める選択をしました。
自転車界隈に於けるメディアとネットの立ち位置
自転車界隈も「大手メディアかネットか」という議論?は、定期的になされます。よく目にする主張としては
メディアの情報は、発信したい内容を恣意的に切り取られている、メディア及び広告主の都合の悪い情報は出てこない。
メディアの情報は、広告が入っているから提灯記事がシレっと混じっている(提灯記事ばかりだ)。
いやいや、SNSや個人ブログの方がレベルの低い情報で溢れかえっている。見るに値するレベルの情報は、極僅かだ。
このような感じでしょうか。
これ、今回の選挙で指摘される「既存メディアvsインターネット」の構図と、かなり似ていることに気がつきました。だからこそ、本記事の作成に至ったわけですが。(なお、後述しますが筆者は今回の選挙が既存メディアvsネットという二項対立では無いと思っています)
一方で、自転車に於ける既存メディアvsネット(SNS)と政治に於いての既存メディアvsネット(SNS)では、明確に異なる点がある事にも気がつきました。
それは、スタンスがハッキリしているか否かです。
選挙や政治の場合、メディアは本来中立であるべきですが、実際はそうではありません。
先の選挙でいえば、大手メディアは稲村氏を支援しているかのような報道スタンスをとりました。斎藤氏側への報道は、パワハラ疑いで失職した元知事という程度の紹介で、中立とはほど遠い印象を受けました。
だからこそ、斎藤氏を応援したい人はネットを使う・ネットに頼るしか無かったのかな?と。従って今回の選挙は既存メディアvsネットという対立では無く、既存の大手メディア&インターネット(SNS)&稲村氏支援を表明した兵庫県22の市町長 vs インターネット(SNS)でした。実際、ネットにも稲村氏支持者は大勢いました。斎藤氏を支援する大手メディアと市町長は、居ませんでした(居なかったように感じました)。
一方で自転車メディア各社は、政治に於けるテレビ・新聞各局ほどは向いている方向に差はありません(と感じます)。
スペシャ派かトレック派の対立はあれど (私はTREK派です)、自転車界隈に有益な情報を届けたい・残したいという基本的なスタンスは、どのメディアでも同じなのでは?と。そして、既存メディアのスタンスと全く違う立場のネットメディアも、そこまで多くは無いイメージです。この構成が、政治におけるメディアネット論争と自転車のそれでは全く異なると感じました。
じゃあ自転車界隈に於けるメディアとネットはどうあるべきか?ですが、これは現時点ではよく分かりません。
ただ、情報量と発信力を考慮すれば、まずはメディアの情報がメインだと思います。そこに一点特化型のいわゆる「オタク」な個人メディア及びSNSが、メディアでは拾いきれない情報を補填し、トータルとして一つの大きな「有益な情報」を構築できるような関係が理想なのかな?と思いました。
まとめ
とくにまとめというまとめは、ありません。
インターネットを使う者として、これからも日々ネットリテラシーを高めなければなりませんし、ブログを運営する以上はその情報の質も高めていく必要があります。
メディアやネットからの情報の取り方、取捨選択へのスタンス、政治への関心?、何かしら参考になる部分があれば幸いです。