先日オープンした、「スペシャライズド京都」に行ってみました。
1番の目的は、S-worksシューズのサイズ確認です。後日書きたいと思いますが、今使っているLAKEのシューズの保温性が良く、夏場使うには厳しいのでは?と思い、新しいシューズにS-worksのシューズを検討している為です。
これまで、スペシャライズド製品を見る際は江坂や神戸の専門店に行っていたのですが、あいにくスペシャライズド直営店化に伴い一時閉店しています。
そこで、今回新装オープンした京都店に足を運んだ、という次第です。
そして、もう一つの目的は、公式サイトに記載されていた「ある内容」を、確認する為です。
スペシャライズド京都 感想
- 駐車場は、店の横に4台。駐輪場は、店入り口(店内)に5台程度ラックがある。
- スタッフは、私が行った時は3名いらっしゃいました
- 試乗車は、20台弱。140万のebikeもありました。
- ヘルメットとシューズは陳列されていました。それ以外のアパレル系は殆ど無い印象。
- ケミカルは、マックオフ。
- コンポの流通が厳しい関係で、リムブレーキからの移行には完成車or機械式ディスクを勧められました。ただ、グロータックの取り扱いは無い。
- 後述しますが、本投稿時点ではエートスは試乗できません。こちらで検討した、エートスに乗ってみたかったのです。コレは残念でした。
全体的に、洗練されてスタイリッシュな印象です。その代わり、「色々ある感」はありません。目的なくふらっと行く感じでは無いと思いました。
なお、店内ではアイスコーヒーを頂きました。ありがとうございました。
自転車を買う場合、購入方法が複数ある
- 自分で公式オンラインストアで購入→自宅or京都店にて受け取る
- 京都店で成約→京都店で受け取る
- S-buildで購入(今回説明は割愛します)
1と2では、店としての対応が異なるようです。(なお、3は2に含む)
1の「自分で公式オンラインストアで購入→京都店にて受け取り」にした場合は、スペシャライズドのマニュアルに沿って開梱され、納車となります。
一方、2の「京都店で成約→京都店で受け取り」にした場合、BBのグリス再塗布・ヘッド周りの再グリスアップ・ホイールのフレ取り&センター出しetc「全バラシ&再組み付けまではいかないけど、それに近い処置」をした後に納車する、との事でした。
京都店はスペシャライズド直営店とは別の母体が運営しており、会社としてメンテナンス面にかなり重きを置いているようです。それ故、店で購入して貰った場合はこのような対応をしている、との事。
なお、購入方法の違いで納車までの対応に差がある理由について質問しましたが、これは明確な回答は得られませんでした。
また、「オンライン用の在庫」と「店頭発注用の在庫」も、別枠のようです。簡単に言えば、「公式オンラインサイトでは在庫有りの車体が、店頭発注だと納期数ヶ月」という事が起こり得るようです。(逆も然り)
これらをユーザー目線で見た時、「自分の通帳残高が100万円減って、代わりに自転車が手に入る」事に変わりありません。
ただ、前者の場合スペシャライズドに直接自転車代を支払います。後者は、お店に支払います。それだけで、なぜ店の対応が変わるのか?と思う人がいると思います。
ここからは、私の推測の域を出ませんが、「お金の流れが違う」事によるものと予想します。もっと簡単に言えば、店に入るマージンが前者と後者では違うのでしょう。
なお、我々の預金残高はどちらで購入しても同じ金額が減りますので、より購入しやすい方法で購入すれば良いかと思います。
敢えていうなら、「公式オンライン購入→京都店受け取り」という購入方法は、段ボールを捨てて貰える程度のメリットしか無いでしょう。どうせオンラインで購入するので有れば、自宅配送。そうでなければ、京都店の店頭で成約するのが良いかと思います。
「オンラインは即納可能、店頭発注だと納期が数ヶ月先」このパターンが起こると、困りますね…ここまでが、スペシャライズド京都の感想です。
コレ以降は、個人的な考察です。興味がある方のみどうぞ。
店内に展示されているバイクは全て試乗可能
今回1番興味があったのは、コレです。自転車ショップとして、非常に珍しいスタイルだと思います。
標題の文言、逆に言えば「店頭には、販売用の自転車を全く置いていない」と言う事です。
今までの自転車ショップであれば、「売り物」の自転車が数台〜数十台(店の規模によって違いますが)並んでいて、試乗車が置いてあることの方が稀です。少なくとも、メーカーの各モデル(ビアンキで言えば、スペシャリッシマ・オルトレ・インフィニートetc)を、一度に全て試乗できるショップは、全国探してもそう無いでしょう。
自転車は、車に比べて試乗の機会が少なく、どうしても「エイヤっ!」っと購入せざるを得ないケースが大半です。いま話題の某国産フレームは、発売後に新規受注停止をせざるを得ない程の注文が入りましたが、試乗してから注文した人は極僅かでしょう。
それが、スペシャライズド京都店では、SL7、エートス、ルーベ、ebike含めて主要車体は全て試乗する事ができます。試乗可能な車体を一つ一つ列挙はしませんが(お店のHPetcでご確認いただければと思います。この投稿時点では404でなぜか開けませんが)、このやり方は非常に画期的だと感じました。
この、自転車ショップには珍しい「店頭には販売用在庫を置かない」スタイル、何故この様な形態になったのか、考えてみました。
在庫が無いと、効率の良い店舗運営に繋がる
このブログは会計解説ブログでは無いので厳密な説明は割愛しますが、一般的には、店舗運営上在庫は少ない方が望ましいと考えます。
在庫をユーザー目線で見た場合
例えばスーパーマーケットの食パンの場合、A社の食パンが店頭に無ければ、B社の製品を購入するか、別のモノ(コッペパンetc)で済ませます。つまり、食パンの様な商材に於いては、目の前に欲しい製品が無ければ、即別の商品や代替品に置き換えられてしまいます。
しかし、スポーツ用自転車はその様な商材ではありません。コロナの影響で納期が年単位の製品も出てきて若干食パン化しつつありますが、原則「欲しい物を注文し、待ってでも手に入れる」類の商材といえます。
店頭に購入可能な在庫が置いていない事は、(特にコロナ前であれば)意外と気にならないと感じました。
在庫を店側の視点で見た場合
計算をわかりやすくするため、定価販売価格が50万円、仕入れ値が「定価の60%」の自転車があるとします。(実際は…想像の域を出ませんが、もう少し高い?と思います)
まずお店は30万円でメーカー(輸入代理店)から自転車を仕入れます。それを、整備や調整をした上で、定価50万円の値札をつけて販売します。
つまり、店頭在庫がお客さんに売れるまでは「店から30万円出ていっただけの、マイナスの状態」です。自転車がお客さんに売れて、その時点で初めて「20万円の儲け」になります。売れなければ、いつまでもマイナスのままです。従って、どうしても「売れ線」が店頭に並びます。
また、多数の在庫を陳列しようと思えば、その分スペースが必要です。広いスペースを借りれば、その分賃料が嵩みます。
更に、自転車は毎年「モデルチェンジ」します。今店頭に並べた最新の在庫も、来年まで売れ残れば過去モデル。場合によっては、50万の定価から45万、40万と値下げしなければ、永遠に売れ残るかもしれません。これは邪魔になりますね。
このように、理論上在庫は店舗運営の足枷となります。
在庫を持たなければ、コレらのデメリットを全て排除する事ができます。試乗車であれば、メーカーからの借り物と考えられます。店を新しくオープンするにあたって、「大幅なマイナスからのスタート」をする必要がありません。
また、京都店の例でいえば、本来店頭在庫陳列に使っていたスペースを全て試乗車に置き換えることで、「試乗したい人」を全国から集客する事が出来ます。
コレが、在庫を持たないという判断に至った理由だと思います。
追記
試乗車はメーカーからの借り物だと思っていましたが、実際は試乗車も店で仕入れて(お金を払って購入)しているようです。
京都店で、「エートスだけはメーカーからの借り物なので試乗出来ない。それ以外は当店のモノなので試乗できる」という説明がありました。また、その筋の方から「試乗車も、原則自店で仕入れる」とのコメントを頂きました。ありがとうございます。
では、何故自転車店は店頭に販売在庫を陳列するのか?
1番の理由は、「集客のキッカケになるから」と考えました。
店側に(できれば話題性があって、かつ利益率の良い商品が良い)商品を仕入れる事によって、集客する事ができます。
「○○、入荷しました。当店には即納可能な在庫がございます。お問い合わせ・ご来店お待ちしております!」と言った投稿、よく目にすると思います。
話題の新製品やモデルチェンジ直後の商品であれば、これを見た普段別の店を利用している人が、店頭に見に来てくれるかもしれません。滅多に入荷しない商品であれば、その場で買ってくれるかもしれません。
先に記載した通り、売れる事で「儲け」に繋がります。その利益で、次の商品を仕入れる事ができます。
在庫は店舗運営上のコストになりますが、うまく利用すれば「店舗広告・来店を促すキッカケ」になり得ます。コレが、店頭に在庫を陳列する目的ではないか?と考えました。
では、店頭に在庫が無いとどうなるのか?
店頭在庫が無ければ、食パンの様に「今自転車が欲しい人」を呼ぶことは出来ません。コロナ禍で、自転車を注文しても納期が半年待ちはザラです。今が特殊な状況とはいえ、店頭に販売在庫が無ければ「いま自転車が欲しい人」は、京都店に行く意味はありません。
従って、納期で他店に優位性を出せない以上、「何かしら」でアピールする必要があります。
例えばメンテナンス。自転車は売りっぱなしではありません。定期的にメンテナンスが必要な商材です。よって、「絶対この店にメンテして貰いたい」という技術を何かしらの方法で示す事が出来れば、他店に対して優位性を示す事が出来るかもしれません。
逆に言えば、他店に対して何か優位性を示す事が出来なければ、儲けを出すのが難しい形態といえます。
試乗車で幾ら「試乗してみたい人」を集めても、それを店頭での購入にまで結びつけなければ、意味がありません。先の通り、自転車は定期的にショップにメンテナンスして貰う必要があります。「某らぼ」のように、どうしても京都店でなければならない何か、が無ければ、自宅近くの店に預ける方が便利です。
「追記」を受けて思うこと
私は「店頭の自転車は全車種試乗可能」という文言を見た時、「全部メーカーからのレンタル品を置くのか。コレ上手いやり方かもなぁ」と思いました。理由は、先の通り、在庫リスクを完全に排除出来るからです。
ただ、店頭スタッフとのやり取りと、後から聞いた「その筋の人」からの情報も含めて考えると、何が狙いなのかよく分からなくなりました。なぜ疑問を持ったかというと、端的にいえば「店頭に売れ残り在庫」がほぼ確実に発生するシステムだと思ったからです。
売れ残りが発生する理由1
店頭の試乗車を購入する事は、一応出来るようです。ただ、試乗車扱いの為メーカー保証対象外、値段も定価です。
日本人の感覚でいえば、誰がどのように乗ったか分からない試乗車を、わざわざ定価で買う意味はありません。
幾らなら買うか?と言われると、それは人それぞれの懐具合によって違うとは思います。ただ、肌感覚として、「元試乗車」は概ね30%〜40%引きになっている印象です。
売れ残りが発生する理由2
第二に、自転車は(ほぼ)毎年モデルチェンジがあります。今店頭に並ぶ車体は、来年の今頃には確実に「旧モデル」となります。
色だけ変わるetcのマイナーチェンジで有れば、翌年も「旧モデル」を店頭に試乗車として置いておけば良いと思いますが、新型やモデルチェンジした製品を置かないわけにはいきません。
つまり、新型やモデルチェンジが起きる度に「旧モデルの元試乗車」が発生します。
「旧モデルの元試乗車」を、定価で買う人は相当稀でしょう。旧モデルという理由で10%〜20%off、元試乗車という理由で30%off。少なくともこれくらいの値下げをしなければ、「旧モデルの元試乗車」は毎年溜まる一方です。
追記を受けてのまとめ
このように、店頭品を全て試乗車にすると、ほぼ間違い無く「売れ残り」が発生します。在庫が無いのに売れ残りが発生するというよく分からない現象がお起こります。
「試乗車」の仕入れ価格が突出して安いのか?とも思いましたが、それなら全国の自転車屋にもう少し試乗車があっても良いような気がします。よって、コレは多分違うのでしょう。
当然、私の考えが及ばない「何か」があって、今回このような仕組みを導入したのだと思います。そこに、非常に興味を持っています。
この辺の事情に詳しい方は、ぜひコメントやなにかご指摘頂けたら嬉しく思います。
まとめ 新しいスタイルの自転車ショップ
繰り返しにはなりますが、今までに無い形のショップという意味で、非常に興味深いと思っています。
良くも悪くも?今までに無かった事や新しい事を積極的にやってみるメーカーです。スペシャライズド京都が、今後自転車ショップの在り方を変えるキッカケとなるかもしれません。
なお、肝心のシューズの試着ですが、自転車用の靴下を忘れたので試着できずじまいでした。